八武組 設計ブログ

ハッタケグミ:三重県四日市市の建設会社 設計メモです

建築文化講演会2023

所属する日本建築家協会三重地域会が主催する建築文化講演会が催されえました。

今回の講演は永山祐子さんで「建築というきっかけ」と題しています。

およそ100名の聴衆でした。

ドバイ万博の日本館や間もなく完成する新宿歌舞伎町の超高層ビル、個人邸などいろいろなスケールでの設計経緯を説明していただきました。

歌舞伎町の超高層ビルは、新宿駅からも遠景が見え、既存の超高層ビルとは違って、エレガントな印象を感じます。そういった印象となる工夫を説明いただき、設計作業の大変さを感じました。

講演のあとの質疑は、若い女性設計者から仕事と子育ての両立など、生活スタイルの質問が多かったものこれまでとは違う講演会と感じました。

環境建築?

名古屋市内の環境建物をみる見学会に参加。

タマディック名古屋ビル。設計は坂茂さんです。無垢の木を積層したものをたくさん使っています。板とか棒がこれまでの木の建材のありかたでしたが、塊として木を使います。一般にはそのまま積むことでログハウスのように壁や柱の要素にそのまま使う感じです。

今回の坂さんのは鉄筋コンクリートとこの木の塊を合わせた独自の使い方でした。普通コンクリートの建物をつくるときには木の仮の枠を作り、そこにコンクリートを流し込み、枠を外して作っていきます。枠は基本的には廃棄処分となります。今回は木の塊をそのままのコンクリートをつくる枠に使い、そのまま室内の仕上げにしています。捨てるものが減り、エコなわけです。木の塊は、構造上も強度があるので、床を支えることにも役立って、コンクリートの量も減っていると思われます。床も同じように作っているので、出来上がっていた内装は全て木になっています。木の囲まれたオフィス空間は癒しの効果も期待できます。

木がそのままが外部にあると雨で痛むので全てガラスで覆われています。居室部分のガラスはセンサーにより、サングラスのように光を通さないように色が変化します。この仕組みで入ってくる熱を制御しています。このガラス1枚の中の部分で色が変わるのでこれまでにはない不思議な見え方をします。

設備面でも天井が木の直の仕上げなので、空調の要素が天井に入れられません。そのため床下から空調空気をじんわり出す仕組みになっています。この仕組みだと足元から暖気がでるので暖房環境に優れています。建物のつくりとして、人にやさしい建物ですが、この事務所ビルにはサウナがあって社員が容易に利用できるようになっています。ソフト的にもやさしい建物です。

 

淺沼組名古屋ビル。設計は川島範久さんと淺沼組さんです。

30年経った自社ビルのリニューアルです。道路側に外部空間を取り入れるのと1,2階を吹き抜けにし、一新した接客空間をつくっています。外部の植栽と木や土の自然素材感を活かした癒しのオフィスとなっています。コンクリートの劣化調査を行いあと40年くらいは使えるとのことで、地下躯体解体を含む新築とのコスト比較と再利用の実施例をつくる営業効果も考えての選択だそうです。

素材を活かした要素

既存躯体の床を抜くと広がりと同時に躯体の力強さを感じます。また時を経たコンクリートの表情もなぜか魅力的です。

三重短大 設計授業

三重短大の設計授業協力。今年度2回目の授業参加でした。前回12月の設計案指導の成果を評価する授業です。

昨年はコロナ拡大の時期と重なり、成果の講評会は行えませんでしたので、2年ぶりの講評会参加となりました。1ヵ月前の指導がどのくらい役立ったか気になるところです。製作の進捗は今一つというのが第一印象でした。他の授業の作業で忙しく、なかなか設計に注力できなかったようです。12月のアドバイスに沿って進めてますが、大半が

とにかくつくるのに背一杯で、面白さを見つけるところまで行ってなさそうなのが、ちょっとかわいそうでした。

そんな中でも、自由な観点でおもしろそうな片鱗をみせてくれる学生さん(本人はどの辺が魅力なのかを、はっきり分かっている感じではないですが)も多く、私としては建築の可能性を感じる楽しい時間でした。

 

若い世代の平屋住宅

年末に平屋住宅が竣工引渡しいたしました。

敷地の余裕があり、平屋ならではの広々した家ができました。

総2階建てに比べるとコストの掛かってしまう平屋なので必要最小限の部屋割りにするようプランニングしています。階段が無いのと廊下が最小となるので居室ゾーンの割合が増加します。また、各室の天井高さの自由度が増します。今回の家は若い世代で住みはじめるので、ロフトを多く取り、遊びの空間や収納量を増やしています。


家の中心となる22.5帖のLDK。梁を出して天井を高く、大きな窓の外に屋根付きのテラスを配して屋外とつながった広がりと外部空間を使いやすい構成としました。

子供部屋は取り外すことできる建具で仕切った2室。各室ともロフト付。

リビングに隣接するご主人用の部屋にもロフト。4.5帖ですが小屋組みを工夫したロフトは3帖なので広さの印象は7.5帖。

洗面所はLDKに連続した場所に設置。窮屈さが無く明るい洗面スペース。造り付け家具として製作したので、来客の使用も問題なし。

家族用の玄関も設置。コートを掛けるスペースと帰宅一番に手が洗えるようシンクを設置しています。

 

住宅団地の家

かなり以前に開発された団地の中での、建替え住宅の引渡しです。

建替え前は、増築により日射の入りにくい構成となっていましたので、南側に極力空きスペースを確保し、各室に日射が十分入るように計画しました。

また複数台の車がスムーズに駐車できるよう、道側の空地も広げています。南に対する間口を広げ、南北方向の奥行きを減らすため、道路により近接して家を建てるように天空率による道路斜線の緩和も使っています。

リビング、各個室には南の大きな窓があります。庭に向いているので道路からは内はみえにくくなっています。

間口一杯を活用するため、道路から建物までの空間は狭めです。但し玄関(写真奥の窪みを折り返したところ)へは、腰壁のゲート、ルーバー壁の階段、建物内の半屋内的な広めのポーチという道順で道路からの距離感を演出しています。

2階の無い部分をつくり、リビングダイニングを天井の高い開放感のある空間としています。

キッチンも町屋風の天井の高い空間にしました。

簡単な製作家具で各スペースの魅力付けとスッキリした収納要素を加えています。

 

設計授業協力

4年ほど前から、関わっている三重短大1年生の住宅設計指導に今年も行ってきました。

昨年はコロナ感染拡大で、最終成果が見られなかったり、影響大でしたが、今年はコロナ前の授業体制に戻った感じです。

今年の出題は南側の間口が北より狭く、伊勢鉄道の高架に隣接という特殊な敷地設定で南の庭を小さく取った少し普通じゃない配置が多いように思えました。少し普通じゃないほうが敷地の特性を考えるのには良い導きになったようです。

建築学科であっても1年生の建築への知識は少なく自分の育った家やハウスメーカーの量産住宅のようなものになりがちですが、今回はそんな家を描いている学生が少なかったように感じました。中には、建築学科4年生でも知らないような海外の建築家が好きだといってマニアックな説明をする学生もいて、その知識がうまく成果につながるか興味深々です。

今回、目立ったのはキャドを使っている学生が多いことで、3Dキャドを使うと検討の効率が格段に上がり、手書き・手造りで作業している子とかなりの差が出るのではと、気になります。実際に作るような図面をつくるのであれば、キャドでも作図手間は変わらないと思いますが、コンセプト的な絵つくりにはかなりのメリットがあるように思います。最近自分の設計検討で3Dキャドのほうが検討の幅が広がるように思えるほどです。

現在校舎は改装中で養生シートが掛かっています。窓の内ボリューム、建物外形線が少し透けた感じ、本来の外壁に比べ耐久性のない柔らかな素材感などシートにくるまれ建物にはとても魅力を感じます。同行した若い人たちには、あまり同意されていないので私たちの世代の特性かもしれません。

地鎮祭

施工を担当させていただくカトリック教会の地鎮祭でした。

キリスト教地鎮祭は初めてです。教会建設のための最初の石を置く定礎式にあたるとのことです。キリスト教域では組石造なので、木造にぴったりのものないようです。日本の神式をの共通点は鍬入れや、塩・お神酒のかわりの聖水によるお浄めです。

随所で皆で聖歌を歌うのが大きな違いです。みんなで合唱するため、どこか明るさがあって楽しいイベント感がありました。

設計は時空間設計の田代輝久さんです。田代さんは東京四谷の聖イグナチオ教会や鹿児島のカテドラルザビエル教会を設計されているので、教会については、詳しい方です。

私のほうは、教会設計にほとんど関わっていないので、神父さまとのお話しもままならない感じです。唯一の接点は、大学の先生の先生が、東京のカトリック成城教会を設計されていたので、その教会やその先生のお話しがつながりました。

式の後、出席の信者さまたちと相談で材料の色決めをされていました。大勢の意見をまとめるはたいへんそうでした。

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