八武組 設計ブログ

ハッタケグミ:三重県四日市市の建設会社 設計メモです

三重短大 授業2

昨年12月に住宅設計の授業協力をさせていただいた三重短大に成果を見せてもらいいきました。課題は先週が締め切りでしたが1/3程度はまだ未完成とのことでした。

並べられてた模型は大半がフルカラー、素材感を示す材料でできあがっています。私の学生のころは、白い模型がほとんど(色つきだと労力が倍以上かかるので)だったので、結構な労力です。図面も若手建築家のプレゼ図面が細い線だけということが多いのに、昔ながらのきちんとしたダブルラインの図面です。これも練習ですから、書かざるは得ませんが、時間がかかります。

指導されている木下先生によると模型は、多くの学生さんはのめり込むほどでつくられいるとのこと。特に家具作りは楽しそうにやっているそうで、思い入れが見てとれます。

1年生なので、プランニングや図面表現は、未熟で書ききるのがやっとという感じで、個人の主張としてはまとまっていないのはやむをえないところでしょう。模型のほうはプランニングとかに関係なく、今風の柔らかい雰囲気が出ているのを感じました。いろんなところで材料をみつけ、ミニチュアハウスを飾っていくようなつくりで、小さな造花や柄の紙を建築模型に入れ込んでいくのは、今の若い建築家たちの感覚に通じているように思えました。ざっくりした建築の心地よさを感じるものです

蓄熱床暖房の家 竣工

蓄熱式の床暖房を採用した家が竣工しました

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高齢のご家族が家におられることが多いとのことで、常時暖房にメリットのある蓄熱式を選択しました。基礎を蓄熱体として利用するので家全体が高効率で暖房されます。もう引っ越しされて数日過ごされたのですが、これまでお住みの古い家から比べると断熱気密性能も向上し、暖房器具の風も感じず、家の中どこでも寒さを感じない室内環境にご満足いただけたようです。

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南側は大きな開口で家の中に居ても、外のように開放感のあるリビングとしました。

天井は高くても、床暖房なので温かく過ごせます。バリアフリーを目指して床下空間を最少に抑えています。今もところ必要はないですが、道路から車椅子にも対応したスロープで室内に入れます。

床暖房は日本ではまだ一般的でない方式を採用していますが、ほかの構成要素は、大手住宅資材メーカーの製品を使っています。お住まいになる方にあわせた部屋のつながりや細部の寸法配慮をして、必要最小限かつ便利で、空間としての雰囲気もよくなる家となるよう心掛けました。

三重短大 授業

日本建築家協会の社会文化活動の一環として、津市立三重短期大学の住生活設計の授業協力に行ってきました。

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授業内容は、生徒さんが取り組んでいる住宅設計へのアドバイスです。36名を3人で分担し、およそ3時間で12名の設計を一人ずつ見させていただきました。住宅のおおよその全体規模、住人の構成・生活志向は決められているものの、課題の敷地は一般的な住宅地で特徴がなく、自分で多くのことを決めなければならないのは、1年生にとっては難しそうでした。

自分の良いと思う家・部屋のあり方を提示するのには、まだ至ってない子が多く部屋を描き切ることで手一杯な感じでした。やっと部屋を書き終えて、これからどうしていけば良いかとの相談がほとんどでしたが、実際に書いて設計が進んでいくことを楽しく思っている感じは伝わってきました。自分のアドバイスから、なにか発見してより楽しい設計になればと、ちょっと熱中した3時間でした。

日本国内では、建築はどちらかというと縮小産業ですが若い人たちが、自分と同じように建築に興味をもっているのを見ると、まだまだ後についてきて来てくれてるなといつもほっとします。

 

 

みえ木造塾 安藤邦廣さん講義

第6回のみえ木造塾は安藤邦廣さんの講義です。

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杉の厚板を使った建物をつくられています。戦後盛んに植林された杉が多くストックされているそうで、積極的に活用されています。

古来の手法、柱の間に板を落とし込んで壁をつくる板倉の家を作られています。板をタテヨコに2重に張り込むことで、2.2倍の壁倍率の認定と、防火構造の認定を取得され、板のみで内外壁をつくることを可能としてます。壁天井の仕上げがなく、床も厚板を使用し、杉のみで構成しコストも抑えられています。

屋根も厚板で直天できれいな空間となります。断熱は板の上の垂木の間に断熱材を置きき、断熱を確保しています。

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東日本震災の仮設住宅をプレハブ住宅に負けない早さとコストで供給したそうです。板倉の仮設住宅群は、雰囲気も良いです。分解可能な板倉の家はその後県営住宅に再構築されたそうです。震災後の住宅地で見られた低価格ハウスメーカーの家で作られる住宅群よりずっと豊かな心象です。

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厚板の杉は、比較的安価で一般的に入手できそうなので、住宅に天然素材を取り入れるのに有効に思えます。

防潮堤

防潮堤の現況

仙台近郊 山元町の防潮堤。

山元町内すべてに建設されているようです。ここでは6mほどの高さがあります。

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防潮堤の内側には松林の再生が進められてます

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牡鹿半島の防潮堤。

入り江全体に防潮堤が続いています

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自然に畏敬の念をもつ日本人の心に沿った手法はないのかしら

防潮堤のない集落、ここでも海際の家はなくなっています

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海はとてもきれいでした

宮城県震災後の建物 

震災後6年間にできた建物を見てきましたin宮城県

山元町第2小学校

設計は大手設計事務所の佐藤総合と若もののSOEPさんの共同設計です。

盛り土で新しく作られた土地に作られています。周辺住民の活動の場として設計され地ますが、まだ周りは街らしさに欠けています。

2階建ての建物の楽しさがあります。外部にも木の要素があり、中庭空間が丁寧に作られていて、優しさの感じられる建物です。大手事務所の大規模建物の処理能力と若者の今風の感覚でうまく仕上がっています。

 

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七ヶ浜町中学校

設計は乾久美子さんです。ほとんど平屋の中学校。中庭に張り出した透明性の高い小スペースが特徴。乾さんとしては出来栄えに満足していないようですが、天井の連続感、連窓の大きな窓の構成などで、都会的なすっきり感・透明感が感じられる建物です。

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平屋や2階建ての建物って、外光が十分入って、いろいろ楽しく作れそうです。

女川駅ゆぽっぽ

JRの駅に温泉と交流空間が一緒になった施設。設計は災害地建築で活躍する坂茂さんです。坂さんらしい屋根構成の建物。ちょっと違和感はあります。プラットホームまで自由に入れて複合化の面白さを十分見せています。

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足湯もありました

シーパルピア女川

女川駅前のショッピングモール(商店街)。設計は東利恵さんです。駅から海に向かった軸線を通した配置で堂々としています。床屋さんとかあって本来は街の駅前商店街のようですが、ちょっとオシャレすぎて観光地的な雰囲気です(ちょっと高さそう)。来ている人も観光の人が多いようでした。

東さんの特異な建物形状を使っていることもあり、軽井沢とかににあるような都会的な観光施設ぽい感じがしてしまって、土地性が薄くなってるように思えます。敷地が造成されたところにあり、地形など外的要素が少ないことも、特異性を失うことにつながっているように思えます。

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坂さんの女川駅展望台からの風景

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海の見えるテラスのカフェ、レストラン

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仮設コンテナ住宅

震災の仮設住宅として、野球グラウドの中に作られた集合住宅。設計は坂茂さん。コンテナを積んだ建物ですが個別のコンテナ単位はわからなくなっています。普通の外壁に色分けされているように見えました。仮設といっても、安全性を著しく怠るわけではないので、どういったところが仮設住宅なのかと。ここを見る限りは設備関係は隠ぺいできなかったりしても仕方なしということは仮設の一要素。地盤との固定条件の緩和もあるようです。

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女川運動公園住宅

3階建てで中庭を抱えた集合住宅。竹中工務店の設計施工。日常動線と緑を取り入れた中庭が魅力的です。共用廊下も変化の要素をいれて、中庭周りに楽しい雰囲気を作っています。

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女川では竹中工務店がかなりの部分で復興にあたっていようでした。まだまだ開発途中ですが、1町1社でコストメリット・統一感など、良いメリットが勝ると良いです。

三陸さんさん商店街

平屋木造で隈研吾さんの設計です。復興の表れということでかなり話題になっています。観光バスが何台もきていました。建物は、過分はなく、きれいにできてます。コストも過大に掛けられないので、東京の有名な建築家の方がやらなくても、地域の建築家がやってもよかったのではないかという施設でした。

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南三陸町役場

大手事務所の久米設計東北支社がプロポーザルで選定、設計。若手の設計士が頑張ってやられたと聞きました。要素が整理されていて、きちんとした印象でした。木の要素、素材感があって優しさもあります。

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あさひ幼稚園

昨年、三重建築家協会の講演に来ていただいた手塚貴晴さんの設計。

講演会の説明で切り崩されていく地山の記憶を残す建物とうかがっていましたが、思ったよりも残っている山が小さく孤立しているのに驚きました。

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山を覆っているクローバーは魅力的でした。

メディアに出てくる建物は、都会の建築家・設計事務所のものが多いようです。もっと地元感のある建物ができるかと願っていたのですが、そうはいかなったようです。

 

宮城県 災害復興住宅

この夏、東北の街々の復興のニュースが目立ち始めたので、仙台の知人を訪ねてみました。未だ造成工事がつづいていますが、災害復興住宅もできてきました。

震災後すぐ、各所に復興のための住民の集まる拠点・象徴的な「みんなの家」という名の建物が著名な建築家によって建てられました。6年が過ぎた現在、その周辺に、新しい住宅が建ち並ぶまでになりました。「みんなの家」は在来木造の建物で、建材も地場のものを使ったりして、復興住宅の目指す理想形のようなものでした。現状周りにできた住宅は、東京郊外の新興住宅地にあるのと同様のハウスメーカーの家ばかりです。道路に対して駐車場をとり、その分下がって家が建つ形態も同じで、町並みとしての密度感が失われています。

f:id:hatt88:20171104135807j:plainみんなの家

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近隣の住宅たち

木造の新しいスタイルの小学校が評価の高い復興住宅地では、1ハウスメーカーが1ブロックを手掛けたと思われる団地があります。こちらも同じような、どこにでもある新興住宅地の風景です。1社が量的なコストメリットを活かして、同一素材で街を作れば、古い集落のように統一された色合いで、少しきれいな町並みができるのではと期待していましたが、短絡的とも思える外装材の貼り分けで期待通りにはなってなくて残念でした。ここに移り住んだ人たちは、以前は古くからの家で、ある程度揃った家並みの良さを感じていたと思うのですが。

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団地のシンボル的な小学校(ちょっと奇抜すぎる感がありますが。)

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小学校に対面する街区の住宅

大半がどこも同じ新興住宅地ぽいのですが、少し違った試みもありました。石巻市の北上地区にある団地は、地元の工務店が集まって、一つの街区を作っています。

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地区の人たちを3年間のワークショップを通じて作られたそうです。基本地元工務店の設計なので、建物自体の切れ味はイマイチですが、住み手の承諾なしにはできない特質があります。それが従来の隣人が近い生活感の良さを継続しているような印象でした。

普通の団地とは大きく違う点は2つ。一つは駐車場を街区でまとめてとっていること。駐車場がまとまると、道に沿った家並み感、道から近い住人の気配があり、街の親密感が上がります。

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もう一つは、アプローチ空間を共有すること。これはアプローチのスロープを共有することで個々で作った場合と比べ、大幅に省スペースとなることを考えたようですが、その結果、近接する数戸の玄関が集まり、近隣の顔合わせの機会が増えることになっています。従来隣りと近い関係で暮らしてきた集落の人には慣れた暮らしぶりが継承されているように思えます。(スロープを上がったところに4軒の玄関が集合)

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建築家の協会などから、単体の復興住宅の提案はなされたようですが町並みに対する提案はあまりなかったように思います。

高台移転でできた街が、以前の街にあったと思えるその地域ごとの雰囲気「土地感」をなくしているようで残念です

 

www.hattake.co.jp