八武組 設計ブログ

ハッタケグミ:三重県四日市市の建設会社 設計メモです

宮城県 災害復興住宅

この夏、東北の街々の復興のニュースが目立ち始めたので、仙台の知人を訪ねてみました。未だ造成工事がつづいていますが、災害復興住宅もできてきました。

震災後すぐ、各所に復興のための住民の集まる拠点・象徴的な「みんなの家」という名の建物が著名な建築家によって建てられました。6年が過ぎた現在、その周辺に、新しい住宅が建ち並ぶまでになりました。「みんなの家」は在来木造の建物で、建材も地場のものを使ったりして、復興住宅の目指す理想形のようなものでした。現状周りにできた住宅は、東京郊外の新興住宅地にあるのと同様のハウスメーカーの家ばかりです。道路に対して駐車場をとり、その分下がって家が建つ形態も同じで、町並みとしての密度感が失われています。

f:id:hatt88:20171104135807j:plainみんなの家

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近隣の住宅たち

木造の新しいスタイルの小学校が評価の高い復興住宅地では、1ハウスメーカーが1ブロックを手掛けたと思われる団地があります。こちらも同じような、どこにでもある新興住宅地の風景です。1社が量的なコストメリットを活かして、同一素材で街を作れば、古い集落のように統一された色合いで、少しきれいな町並みができるのではと期待していましたが、短絡的とも思える外装材の貼り分けで期待通りにはなってなくて残念でした。ここに移り住んだ人たちは、以前は古くからの家で、ある程度揃った家並みの良さを感じていたと思うのですが。

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団地のシンボル的な小学校(ちょっと奇抜すぎる感がありますが。)

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小学校に対面する街区の住宅

大半がどこも同じ新興住宅地ぽいのですが、少し違った試みもありました。石巻市の北上地区にある団地は、地元の工務店が集まって、一つの街区を作っています。

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地区の人たちを3年間のワークショップを通じて作られたそうです。基本地元工務店の設計なので、建物自体の切れ味はイマイチですが、住み手の承諾なしにはできない特質があります。それが従来の隣人が近い生活感の良さを継続しているような印象でした。

普通の団地とは大きく違う点は2つ。一つは駐車場を街区でまとめてとっていること。駐車場がまとまると、道に沿った家並み感、道から近い住人の気配があり、街の親密感が上がります。

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もう一つは、アプローチ空間を共有すること。これはアプローチのスロープを共有することで個々で作った場合と比べ、大幅に省スペースとなることを考えたようですが、その結果、近接する数戸の玄関が集まり、近隣の顔合わせの機会が増えることになっています。従来隣りと近い関係で暮らしてきた集落の人には慣れた暮らしぶりが継承されているように思えます。(スロープを上がったところに4軒の玄関が集合)

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建築家の協会などから、単体の復興住宅の提案はなされたようですが町並みに対する提案はあまりなかったように思います。

高台移転でできた街が、以前の街にあったと思えるその地域ごとの雰囲気「土地感」をなくしているようで残念です

 

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