八武組 設計ブログ

ハッタケグミ:三重県四日市市の建設会社 設計メモです

建築の日本展

建築の日本展。六本木ヒルズの52階の森美術館です。開館時間が平日でも22時までなので仕事終わりでもゆっくり見れます。52階の展示品の傍らから東京の街が望めるもの他かにはないところです。特に建築・都市に関わるテーマだと意味深い気がします。

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展示は竪穴式住居、民家、日本建築史上重要な建物と過去から現代までの建築家の活動、世界の建築との関係など、建築を専門としない人にわかりやすい内容で展示されています。解説文は少なめで模型がたくさんで実際に訪れる甲斐のあるものです。

偏り無く日本の建築の流れが見れる良い印象でした。美術館の立地と平日だったこともあると思いますが来場者の半分くらいが外国人でした。

待庵の実物大模型もあります。中にも入れます。茶室のスケール感を体感できます。

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内部はよくできてます。

ずっと前に取り壊された丹下健三自邸の縮尺1/3模型もあります。

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写真や図面から感じたのはスマートで格好よい現代的な住宅でしたが、造られていた模型を見ると、従来の建物と同じような木組み部分が結構あって、最近の建築家がつくるものほどはすっきりしていないことがわかりました。(とはいえ、今でも素敵に思える部分も多々見出せます)。ピロティとなっている1階部分も写真のイメージだと階高があって、上方に伸びやかですが、模型を見ると寸詰まっていました。地盤の傾斜の都合で少し短くなっていたのかもしれません。

いつも鍛造のパーツや照明器具を作ってもらっている倉田光太郎さんが30年ほど前につくった鍛造の玄関扉装飾が展示してあってびっくりしました。

 

福島の復興建物

 

日本建築家協会の三重県メンバーの方々と福島県内の震災復興に関わる建物の視察に行ってきました

菜根こども園 郡山市

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原発避難地区から移ってきた施設、0歳~6歳までを預かる。基本1階建て(一部2階)の木造の建物です。玄関はなく深い軒下空間から各部屋に入る構成です。内部にも木の要素を現しています。耐火性能を燃え代設計でクリアしているので木材サイズが通常より太くなっています。使用材は構造材、床、壁すべて杉材です。かなり立派な材です。

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内部は低い家具で区切られているのみで、空間の広がりがあります。音が通るため、子供たちが集中できないのではと心配されていましたが、聞き分けようとする力が発揮され、むしろ良い効果があったとのことです。施設のあり方に対する思考が入園の判断要素になるそうで施設作りが重視されるようです。平屋で木製サッシュなど木を多く使ったこの施設はコストは木造注文住宅の1.5倍くらい。

建物が建つ前の風景。

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この建物ができた今は上質な住宅地という印象でした。良い建物が周辺の価値も上げていると感じました。

福島県買取型復興公営住宅いわき勿来団地・戸建て いわき市

設計と施工会社が一体となって建設後、県が買い取り公営賃貸住宅とする事業コンペによって建てられた戸建て住宅群。1つの開発地を数社に分けて作られています。

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設計の辺見美津男設計室さんのブロックは外壁そとん壁(シラス土の左官壁)に板張り、サッシュjは樹脂サッシ、雨どいはガルバニウム製で外構も感じの良いベンチや小道が整備され、一般の住宅よりずっと良い家。

 

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工事費も選定の1要素だろうと思われるのでこの仕様でコンペを勝ち取るのは結構たいへんと推測されます。平屋60m2、2階建て80m2。隣のブロックは一般的なハウスメーカーの家程度で、建設コストの違いは明らか、家賃に差があるとは思えないので、抽選で決まるであろう住民にも不公平感があるように思えます。戸建て住宅の北側には、UR(住宅公団)の鉄筋コンクリート造の4階建ての集合住宅(全国的にドコにでもある感じ)、視察メンバーからは集合住宅タイプを選ぶ入居者はなにを由としているのかと疑問。集合住宅のほうが家賃が安いということなのでしょうか?分譲の場合は価格差が十分あるので、1開発地に戸建てと集合住宅タイプという構成は多いのですが、公営賃貸となると家賃差があまり無いように思えるので、この点でもくじ運の不公平感があるのではと思います。

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福島県買取型復興公営住宅いわき平赤井団地・集合住宅 いわき市

勿来と同じ方式の公営住宅。こちらは鉄骨造4階建ての同種の建物形態です。

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ここの特徴はWood ALC(木よる低炭素社会達成)による外壁です。厚さ120mmの木材を並べたパネルで、耐力壁・防火性能を確保しています。二酸化炭素を吸収する木の利用を促進することと外観が自然素材の表情になるのがメリットです。鉄の部分も亜鉛メッキ材を使っているので素材感のある良い印象です。WALC部分に雨が掛かるのを避けるように軒を出しあるのも、デザイン的に合っているように思います。工期短縮が求められていたそうで、設計時から工期が短くなる材料、工法を選択をしてきたそうです。部分的に一般的でない材料選択されているところがありました。

いわき市高久第十応急仮設住宅・戸建て 板倉の家

外国産の木材に圧されて、需要の伸びない国産杉材を目一杯つかった板倉つくりの仮設住宅

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厚さ40mmの板を柱の間の落としこんで造る板倉つくり、耐力壁としても、防火構造の壁としても認定されて、現法規をクリアしています。耐力を持った外壁を構成する板厚で断熱を確保しているので、仮設から本設建物へ移行する解体組み立て直しの再利用率の向上に役立っています。再利用率は60%以上とのことです。木をふんだんに使っているので仮設時のコストは掛かりますが、再利用分の軽減が可能で、住む人が豊かに思えるメリットがあります。

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訪れたときはちょうど解体の途中で建物構成がすべて見れました。屋根の断熱は藁が使われているのも見れました。6年くらいは使われた家ですが内部の木はきれいなままでした。

辺見美津男設計室 作楽  白河市

今回、視察をガイドしていただいた日建築家協会福島地域会の辺見美津男さんの設計室にて、復興事業に関わっていった経緯や災害前にできることをお話いただきました。

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この設計室は明治時代の米蔵を改造したもので、時間を掛けたものの魅力にあふれる建物です。内外素焼きの瓦を貼りこんだなまこ壁を使った珍しい蔵です。解体を考えていた所有者に改造利用をお願いしたそうで軒高4mを階高2mの2階を作っています。内部に柱、梁を追加したことで耐震性も増したそうです。東日本震災では一部壁が崩れたそうですが、根気いる復旧を経て保存建物に指定されています。設計相談の方たちにも好印象の建物なので、設計の受注にも効果の高いそうです。

 

 

名古屋のマクドナルド

今日は月1回の建築家協会東海支部の会報誌編集会議でした。書きものは苦手で、三重地域会の1委員として三重とのつなぎが主な任務と臨席している私とは違う方々ばかりの編集会議は今日も熱の入ったものでした。会議は予定を1時間ほど延長しましたがまだ足りない雰囲気です。いい勉強になります。

会議の場所のすぐ近くの名古屋栄のマクドナルドは、都会的で洗練感のある設えの店舗で、日本一スマートなマクドナルドではないかと思います。

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内部がクリアに見えるファサード、空間の余裕感。色合いや什器もシックにデザインされたものになっています。ファミリー感は無く、ここにいる人がちょっと素敵にみえるように思えます

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外国にあるデザインが気の利いたチェーン店だと空間の広々さは良いのですが隅のほうに汚れたところがあったりしてがっかりするのですが、ここはきれいで、行き届いています。

1年検査

昨年夏に竣工引渡しの住宅で1年経過後の状態を見せていただきました。この住宅は遠隔地のため設計のみで、施工は別の建設会社にお願いしました。

若干、靄が掛かっていますが空も海もきれいで、建物が映えます。

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 外壁はヒノキ板張り。材がしっかりしているので、海風に直面するという悪条件ですが、反りや乱れはありません。塗装も竣工時ほど同じ。一般的に板張りで使われる薄板の杉材とは比べものならないきれいさです。

内部も塗装の壁の割れなどで気になるところはありませんでした。無垢の木を使った梁と壁の接点は隙間が開きやすいのですが。構造の耐力要素の充実と湿度調整を行う設備機器のおかげで、建物の揺れが少なく、湿度・温度の変化が抑えられたためだと思われます

インターンシップ

今年も高校生の職業研修に協力しました。例年通り建築学科2年生の生徒さんです。

実際の設計の作業に関わってもらい、いろいろなアイデアを盛り込んだ建物の魅力を実感してもらえれば、設計者とつくる住宅の普及に役立つのではないかと積極的に受け入れています

今回の研修は竣工真近の住宅の現場確認への同行してもらい、その住宅の特徴が、その敷地条件や住まい手の志向にどのように対応しているかを、空間を体感しながら説明しました。

その後、厚紙を使って検討模型を作ってもらい、比較的簡単に立体ができることや、簡易な模型でもつくると楽しくなることを感じてもらえるようにしました。

まだ2年生なので模型を作ることは多くないようでしたが、結構きれいに作ってもらえました。

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全く知らないところでの2日間の研修でかなり緊張していたようですが、なにか楽しいところを感じてもらえると良いです

はまぐりプラザ 猫飛び丁

桑名市内に内藤廣さん設計の建物があると聞いて見て来ました。

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2012年竣工したはまぐりプラザです。漁港を守る堰を造るにあたり、そこにあった漁協の施設を含む建物として作られたようです。地盤がよくないので軽い鉄骨造となったとのこと。

周辺民家に合わせた屋根と分節したバリューム感で構成されてます。3階建てで少しシンボリックなものも意識されたかもしれません。建物4周にデッキが設けられ、揖斐・長良川と船ダマリ・漁村集落が一望できます。

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外壁は板張り、ちょっと汚れた感がありますが、自然素材を使うことの風合い・時間経過の変化を良しとする表現です。ただ軒裏はあまり気をつかわなかったのか、物足りない仕上げです。

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比較的普通ぽい形態の建物ですが、設備機器が目立たないよう、建物内3階に空調屋外機が入れられているのは、結構贅沢なつくりです。

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はまぐりプラザの脇の街区は「猫飛び丁」と呼ばれる特異な街になっています。猫が飛んで渡れるほどの2mほどの路地の街です。

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土地の限られた漁村などによく見られる密度の高い集落です。建築に関わる私たちには、なぜか魅力的に見える街です。普通の住宅地に住む人にはわからない、近隣との緊密な住み方の良いところがきっとあるのではないかと思ってます。

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近隣の結束が一つのメリットと思いますが、そんな街でも不審者がでるのが残念。

なぜか道の正面に家の玄関がある家が多いように思えます。玄関が少し魅せる形で作られているようで、通りのアイストップとなり街を飾っているようにも思えます。

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船ダマリの先にはお堀がつながっていますが、今は埋められています。水があれば魅力ある空間になりそうなのですが。

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木の塗装

日本建築家協会の企画した木部塗装の勉強会がありました

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講師は自然塗料のオスモ&エーデルの大黒さんです。オスモ社の製品紹介だけでなく、よく使われている他者の製品の特徴も合わせて、説明いただく内容で、各塗料について基本的な知識を整理できる良い機会となりました

国土交通省の塗装略号WP・UC・ST・STUCなどの示す仕様を具体的な製品名とそれぞれの特性をあげての説明で塗料選定の際の適切な判断材料が得られました

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塗装時の下地処理や樹種の違いに対する注意点などを実物塗り見本を持って説明いただき、実感をもって木塗装の知識を得ることができました

もちろん、オスモさんの自然塗料の成分特性も説明していただき、優れているところが納得できました

www.hattake.co.jp