八武組 設計ブログ

ハッタケグミ:三重県四日市市の建設会社 設計メモです

旧上野市庁舎 シンポジウム

伊賀市でドコモモJapanのシンポジウム「建築はよみがえる」が催されました。

旧上野市庁舎の再生活用を支援するイベントです。庁舎の再生利用を進める市長が先の市長選で当選、活用のための基本設計は完了したのですが、依然として議会の反対勢力が強く、次の段階に進まず停滞しています。

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シンポジウムの前に市庁舎の見学会、建築関係者だけでなく、一般の方も多く参加されいました。当時設計を担当された元坂倉建築研究所の好川さんも同行で、建物の独自性や後に続く名建築へ継承されていった点など説明されました。一般には1階の窓口部分しか入れないため、外からは見えない2階の屋上中庭を囲む議会ゾーンの空間を始めて体験して、残すべきと建物と評価される所以を感じた様子でした。

シンポジウムの最初は、ドコモモ代表になられた東海大学の渡辺研司教授がモダニズム建築の定義がどのようなものかを説明され、それぞれの時代の建物が街に残り、それが積み重なっていくところに歴史ある街の価値の厚みを増していくと。未来に繋げていくことをしていきたいとお話されました。

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続いて、東京理科大の山名善之さんは、坂倉準三の建築の歴史的価値を説明されるとともに、世界遺産となっている世界の近代建築を紹介されました。世界遺産の選考を担う世界的な機関のイコモスから、日本の20世紀遺産として旧上野城下の城下町とモダニズム建築群による景観が認定されていて、世界的に稀な存在であることも言及されました。

最後は、鹿児島大の鰺坂徹さんが自身の関わられた国際文化会館前川國男+吉村順三+坂倉準三 設計)の再生活用についてのお話でした。元のイメージを守りつつ耐震性の確保と現在のニーズに合わせた改修で、これまで以上の活用を達成している実例です。

最近、大阪の枚方市庁舎(坂倉準三)の解体、名古屋市内で中日ビル丸栄の解体など近代建築が失われつつあります。お城や愛知県庁のようなモダニズム以前の建物は一般の方からも残そうという機運はありますが、モダニズム建築は新しい印象で歴史的な価値をみてもらえないのが世界的な傾向です。専門家は歴史の中で20世紀の建物は空白になってしまうのではと危惧しています。

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