八武組 設計ブログ

ハッタケグミ:三重県四日市市の建設会社 設計メモです

第4回 みえ木造塾

今年4回目になる木造塾に参加してきました。

午前中は、木造塾参加者相互の意見交換会で、それぞれの活動を発表する会です。

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自然素素材、在来工法に徹底した家づくりの設計士、自らの山の性質を活かし、広葉樹や混植の植林を試みる林業家、大工技能を絶やさぬように機械加工を避け、手加工を続ける大工さんなど、独自の活動に熱意をもって取り組む方々の発表には、多く刺激をいただきました。

午後は、パッシブ住宅を研究する野池政宏さんの講義です。

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少し前、ハウスメーカー各社が提唱していた「スマートハウス」のように省エネ電化製品を付加した家づくりではなく、家自体で省エネを実践していこうとするのが、氏の提案する「パッシブデザインの省エネ住宅」です。

その地域の特性を十分検証し、地域にあった配分で各省エネにつながる要素を採用することで、質の高い室内環境と省エネルギーを実現することを講義いただきました。

敷地の特性を分析理解して、活用するという建築家の職能に合致する考えです。

具体的内容としては、近々に義務付けられる省エネ計算を利用して、建物のパッシブデザインを実証的に検証していく方法などで、なんとなく採用していた要素の裏付けができるようなるとかです。たとえばLow-Eガラスの使い方について、数値化による検証により、各種日除けとの組み合わせで相反する夏の遮熱と冬の断熱要素を解決できることが、はっきりわかります。

祝!上棟 稲沢市N邸

愛知県稲沢市に建てるN邸。上棟しました。

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四日市市内は未明大雨警報が出ていて心配していましたが、少し雨のぱらつきはありましたが大きく降られることなく、むしろ日差しの暑い中、無事完了。

腕のよい大工さんぞろいで、作業は手際よく進み、現場はいつも以上に楽しそうな雰囲気でした。

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市街化調整区域内の古い集落の中なので、接道が狭いです(3.2m巾)。大型のレッカー車はどうやって入ったかと思われるほどです。材料搬入のトラックも小さ目となります。

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大きな家ではないですが、吹抜のリビング・大きな窓や広めのバルコニーなど楽しめる要素が盛り込んであります。南西側は水田が広がる好立地で、気持ち良くなりそうです。

 

 

三分一博志展

愛知淑徳大学長久手キャンパスで行われている三分一博志展を見てきました。

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三分一さんは、昨年の講演会で真面目な設計過程を伺い、好感と興味を持っている建築家です。

展示は、映像を使った初期の作品から最新作の紹介と近年、テーマとしているムービング・マテリアルに着目した作品のスタディ模型の展示が主です。

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初期の作品は、センスある上品な建物でしたが際立った特質は弱いように思えますが、ムービング・マテリアルとする地域の風・水・太陽の動きを調査・活用した建築作品は、三分一さん独自の建築形態を作り出していると思います。講演会で伺った風洞シュミレーションを検証した模型が展示されていましたが、その手作り感は予想外でした。一般に発表されている図版がきれいだったので、もっと大がかりな装置で検証しているのだろうと思ていました。

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(段ボール箱のなかに建物模型があり、中央の窓から、線香の煙の動きが見れる風洞実験装置)

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(アクリルでつくり、内部の風の動きを確認できる模型で検討)

自分たちのできるところを、臆さずやることで、成果につながることを感じました。

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淑徳大学に建築系の学科があることは知りませんでした。新しい校舎はシーラカンスのメンバーが設計していて、今風のセンスを感じる建物でした。建築学科の存在感が弱い中部圏です。各学校、もっとアピールして建築への関心が高まると良いですが。

長久手に行ったので、香山壽夫さん設計(1989年竣工)の「文化の家」も見学してきました。劇場・図書館などの複合施設で住宅地のなかに、突出しないようボリュームを抑えて作られています。各所ディテールをしっかり作りこんだきちんとした建物です。

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内部もしっかり作りこまれていて当時の建築家のエネルギーを感じます。

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最近のニュートラルな(建築家のパーツデザイン、空間の作りこみが少ない)建物つくりからすると、少し建物からの圧力を感じますが。(きちんと設計された価値ある建物だと思います)。

第3回みえ木造塾と瀧原宮

第3回目のみえ木造塾が開かれました。

今回の会場は、大紀町にある薪ストーブの販売店であるひのき家さんです。

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元は町営の昆虫館だった建物を地元の吉田林業さんが買い取って、自社のスギ材を燃料として使うストーブ販売を始めたところで、立派な建物でした。

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講師は公共物のプロダクトデザインを手掛ける南雲勝志さんです。

家具デザイナーとして仕事をはじめ、街灯やサインなどの統括的にデザインする方面で活躍していらっしゃいます。今回新しくなった東京駅から皇居に至る行幸通りのデザインも現在進行中です。

今回のテーマは「記録をつくり、未来につなぐデザイン」で、木を使って市民参加を促している仕事の説明とそれに関わる考えをご講義いただきました。

南雲さんの地元で続けられていた林業による杉材の活用がされないことから、地場産木材を活かした街づくりに始められたそうです。宮崎県日向市、延岡市兵庫県姫路市秋田県秋田市などでの事例をご紹介いただきました。

その地を探求し、使用素材やデザイン要素を見つけだしていくやり方で、その地ならではの公共デザインを作られています。また市民を巻き込むことで、作ったものに愛着をもってもらうようにしているところも良いやり方です。一般に、木を使うとメンテナンスが大変で行政は嫌がるのですが、南雲さんは、市民みんなで作って、手入れもみんなでという手法で、木を使った魅力ある仕事をされています。

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皇大神宮別院 瀧原宮

ひのき家さんの向かいは、瀧原宮です。せっかく大紀町まできたので、参拝してきました。伊勢神宮の原型といわれるように、山を背負った構成となっています。樹齢300年を超える杉の大木が参道の脇からあって、森深く神聖な雰囲気があります。

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御手洗場も伊勢神宮と同じように川で行うようになっています。

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式年遷宮で社は新しくなったところのようでした。

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遷宮用に敷地が開いています。

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写真より鬱蒼した雰囲気で、神聖感ずっともあります。国道42号線沿いで分かりやすいところです。

工業高校インターン

昨年に引き続き、今年も工業高校の生徒さんのインターン研修に協力させていただきました。今年は女子生徒さんです。現場見学と模型作業、パソコンでの色塗りを実習してもらいました。模型も色塗りも初めてだそうで、結構たいへんそうでした。一方、現場見学は初めて実際につくっている現場を体験でき、うれしかったと言ってもらえたので、マイナスイメージばかりにならなくて、一先ずは良かったかと。

今回は設計業務の研修でしたが、生徒さんは、大工さん志望の気持ちもあるそうです。技能検定に向けて、木工練習中とのこと。

求人のお願いに県内の工業高校を回ると、大工さん志望の生徒が多いと聞きます。大工さんのほうも人材不足を感じていて、気持ちの上では需要と供給があるのですが、1人企業である大工さんが大半で、見習いを雇うことが難しいのが実情です。住宅メーカーも大工さん消滅を心配していますが、技術、人手のいらない家つくりも一方で進んでいて、大工さんのやりがい・報酬の増にはつながりにくい状況と思います。

設計者としては、お互いの技術力量を十分に発揮できる親密な共同作業を目指してます。

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金沢の建物

社員旅行で金沢に。谷口吉生さん設計の「鈴木大拙館」見てきました。

谷口さんらしい、きちんとした建物で厳しい施工精度で作られています。施工は清水建設と豊蔵組です。

地元出身の仏教学者 鈴木大拙の精神とされる「静か」「自由」の具現化を図ったとされています。本多の森公園と住宅地の接点となるところに立地していますが、公園の緑を借景として、ほかの要素を排除した周辺から独立した静的空間を作り上げています。

谷口さんのストイックな設計と施工精度から生み出す独自の雰囲気です。

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思索の空間 この施設のメインの空間です。

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コンクリートがきちんと打設されています。建具の枠も無しです。構成する線をなくすことでよりシンプルですっきりした印象になります。

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金属ルーバーの付け根の石がルーバー型に沿ってキレイに切り取られているように見えます。

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金沢に来る度に訪れる武家屋敷街長町にある野村家武家屋敷跡。今回3回目です。

最初に見たときの強烈な印象が正しかったのかが気になって、何度も来ますが、やはり凄い庭です。米国の庭園専門誌が選ぶ日本の庭園ランキングで足立美術館(島根)、桂離宮(京都)に次ぐ第3位になっています。

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この庭の魅力は狭い場所でありながら周辺の様子とは全く違った空間を作っているところです。庭の池は2段になっています。下部の池の水深が深いので室内からは縦に深い空間が印象づけられます。中二階になっている茶室からの眺めは、さらに立体的で山中の谷間にあるような景色にも見えます(周辺は路地の入り組んだ市中です)。

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どちらの建物も周囲とは別世界をつくっている好例です。金沢という土地の文化環境にもよるものでしょう。

 

 

竹原義二 講演

木造についての勉強会、三重木造塾の第2回は著名な建築家である竹原義二さんの講演会です。竹原さんの作品は木を表した自然素材を活かした住宅が有名です。

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今回の会場は、竹原さんのリクエストで三重大学のレイモンドホールです。せっかくの機会なのでレイモンドの作品でと起ってのご希望でしたが、冷房設備がないのを確認しなかったとのことで、本日33度の気温で、キツイ講演会となりました。

準備した講演資料がパソコンから出せないということでしたが、レイモンドホールの特徴を使いながらの特別仕立てで、今取り組んでいる事項を、わかりやすく愉快にお話いただきました。

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今取り組んでいらっしゃるのは、子供たちへ本物の建物を経験させることと、障害者芸術を広め、評価を高めていく活動です。どちらも手間を惜しまないことが、いかに素晴らしいものをつくれるかということにつながっています。一般の建築が、手間を少なく、諸問題の発生を極力避けることに傾向してしまっていることに苦言を呈しています。

 

www.hattake.co.jp