八武組 設計ブログ

ハッタケグミ:三重県四日市市の建設会社 設計メモです

三重短大 授業

日本建築家協会の社会文化活動の一環として、津市立三重短期大学の住生活設計の授業協力に行ってきました。

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授業内容は、生徒さんが取り組んでいる住宅設計へのアドバイスです。36名を3人で分担し、およそ3時間で12名の設計を一人ずつ見させていただきました。住宅のおおよその全体規模、住人の構成・生活志向は決められているものの、課題の敷地は一般的な住宅地で特徴がなく、自分で多くのことを決めなければならないのは、1年生にとっては難しそうでした。

自分の良いと思う家・部屋のあり方を提示するのには、まだ至ってない子が多く部屋を描き切ることで手一杯な感じでした。やっと部屋を書き終えて、これからどうしていけば良いかとの相談がほとんどでしたが、実際に書いて設計が進んでいくことを楽しく思っている感じは伝わってきました。自分のアドバイスから、なにか発見してより楽しい設計になればと、ちょっと熱中した3時間でした。

日本国内では、建築はどちらかというと縮小産業ですが若い人たちが、自分と同じように建築に興味をもっているのを見ると、まだまだ後についてきて来てくれてるなといつもほっとします。

 

 

みえ木造塾 安藤邦廣さん講義

第6回のみえ木造塾は安藤邦廣さんの講義です。

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杉の厚板を使った建物をつくられています。戦後盛んに植林された杉が多くストックされているそうで、積極的に活用されています。

古来の手法、柱の間に板を落とし込んで壁をつくる板倉の家を作られています。板をタテヨコに2重に張り込むことで、2.2倍の壁倍率の認定と、防火構造の認定を取得され、板のみで内外壁をつくることを可能としてます。壁天井の仕上げがなく、床も厚板を使用し、杉のみで構成しコストも抑えられています。

屋根も厚板で直天できれいな空間となります。断熱は板の上の垂木の間に断熱材を置きき、断熱を確保しています。

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東日本震災の仮設住宅をプレハブ住宅に負けない早さとコストで供給したそうです。板倉の仮設住宅群は、雰囲気も良いです。分解可能な板倉の家はその後県営住宅に再構築されたそうです。震災後の住宅地で見られた低価格ハウスメーカーの家で作られる住宅群よりずっと豊かな心象です。

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厚板の杉は、比較的安価で一般的に入手できそうなので、住宅に天然素材を取り入れるのに有効に思えます。

防潮堤

防潮堤の現況

仙台近郊 山元町の防潮堤。

山元町内すべてに建設されているようです。ここでは6mほどの高さがあります。

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防潮堤の内側には松林の再生が進められてます

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牡鹿半島の防潮堤。

入り江全体に防潮堤が続いています

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自然に畏敬の念をもつ日本人の心に沿った手法はないのかしら

防潮堤のない集落、ここでも海際の家はなくなっています

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海はとてもきれいでした

宮城県震災後の建物 

震災後6年間にできた建物を見てきましたin宮城県

山元町第2小学校

設計は大手設計事務所の佐藤総合と若もののSOEPさんの共同設計です。

盛り土で新しく作られた土地に作られています。周辺住民の活動の場として設計され地ますが、まだ周りは街らしさに欠けています。

2階建ての建物の楽しさがあります。外部にも木の要素があり、中庭空間が丁寧に作られていて、優しさの感じられる建物です。大手事務所の大規模建物の処理能力と若者の今風の感覚でうまく仕上がっています。

 

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七ヶ浜町中学校

設計は乾久美子さんです。ほとんど平屋の中学校。中庭に張り出した透明性の高い小スペースが特徴。乾さんとしては出来栄えに満足していないようですが、天井の連続感、連窓の大きな窓の構成などで、都会的なすっきり感・透明感が感じられる建物です。

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平屋や2階建ての建物って、外光が十分入って、いろいろ楽しく作れそうです。

女川駅ゆぽっぽ

JRの駅に温泉と交流空間が一緒になった施設。設計は災害地建築で活躍する坂茂さんです。坂さんらしい屋根構成の建物。ちょっと違和感はあります。プラットホームまで自由に入れて複合化の面白さを十分見せています。

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足湯もありました

シーパルピア女川

女川駅前のショッピングモール(商店街)。設計は東利恵さんです。駅から海に向かった軸線を通した配置で堂々としています。床屋さんとかあって本来は街の駅前商店街のようですが、ちょっとオシャレすぎて観光地的な雰囲気です(ちょっと高さそう)。来ている人も観光の人が多いようでした。

東さんの特異な建物形状を使っていることもあり、軽井沢とかににあるような都会的な観光施設ぽい感じがしてしまって、土地性が薄くなってるように思えます。敷地が造成されたところにあり、地形など外的要素が少ないことも、特異性を失うことにつながっているように思えます。

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坂さんの女川駅展望台からの風景

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海の見えるテラスのカフェ、レストラン

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仮設コンテナ住宅

震災の仮設住宅として、野球グラウドの中に作られた集合住宅。設計は坂茂さん。コンテナを積んだ建物ですが個別のコンテナ単位はわからなくなっています。普通の外壁に色分けされているように見えました。仮設といっても、安全性を著しく怠るわけではないので、どういったところが仮設住宅なのかと。ここを見る限りは設備関係は隠ぺいできなかったりしても仕方なしということは仮設の一要素。地盤との固定条件の緩和もあるようです。

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女川運動公園住宅

3階建てで中庭を抱えた集合住宅。竹中工務店の設計施工。日常動線と緑を取り入れた中庭が魅力的です。共用廊下も変化の要素をいれて、中庭周りに楽しい雰囲気を作っています。

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女川では竹中工務店がかなりの部分で復興にあたっていようでした。まだまだ開発途中ですが、1町1社でコストメリット・統一感など、良いメリットが勝ると良いです。

三陸さんさん商店街

平屋木造で隈研吾さんの設計です。復興の表れということでかなり話題になっています。観光バスが何台もきていました。建物は、過分はなく、きれいにできてます。コストも過大に掛けられないので、東京の有名な建築家の方がやらなくても、地域の建築家がやってもよかったのではないかという施設でした。

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南三陸町役場

大手事務所の久米設計東北支社がプロポーザルで選定、設計。若手の設計士が頑張ってやられたと聞きました。要素が整理されていて、きちんとした印象でした。木の要素、素材感があって優しさもあります。

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あさひ幼稚園

昨年、三重建築家協会の講演に来ていただいた手塚貴晴さんの設計。

講演会の説明で切り崩されていく地山の記憶を残す建物とうかがっていましたが、思ったよりも残っている山が小さく孤立しているのに驚きました。

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山を覆っているクローバーは魅力的でした。

メディアに出てくる建物は、都会の建築家・設計事務所のものが多いようです。もっと地元感のある建物ができるかと願っていたのですが、そうはいかなったようです。

 

宮城県 災害復興住宅

この夏、東北の街々の復興のニュースが目立ち始めたので、仙台の知人を訪ねてみました。未だ造成工事がつづいていますが、災害復興住宅もできてきました。

震災後すぐ、各所に復興のための住民の集まる拠点・象徴的な「みんなの家」という名の建物が著名な建築家によって建てられました。6年が過ぎた現在、その周辺に、新しい住宅が建ち並ぶまでになりました。「みんなの家」は在来木造の建物で、建材も地場のものを使ったりして、復興住宅の目指す理想形のようなものでした。現状周りにできた住宅は、東京郊外の新興住宅地にあるのと同様のハウスメーカーの家ばかりです。道路に対して駐車場をとり、その分下がって家が建つ形態も同じで、町並みとしての密度感が失われています。

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近隣の住宅たち

木造の新しいスタイルの小学校が評価の高い復興住宅地では、1ハウスメーカーが1ブロックを手掛けたと思われる団地があります。こちらも同じような、どこにでもある新興住宅地の風景です。1社が量的なコストメリットを活かして、同一素材で街を作れば、古い集落のように統一された色合いで、少しきれいな町並みができるのではと期待していましたが、短絡的とも思える外装材の貼り分けで期待通りにはなってなくて残念でした。ここに移り住んだ人たちは、以前は古くからの家で、ある程度揃った家並みの良さを感じていたと思うのですが。

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団地のシンボル的な小学校(ちょっと奇抜すぎる感がありますが。)

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小学校に対面する街区の住宅

大半がどこも同じ新興住宅地ぽいのですが、少し違った試みもありました。石巻市の北上地区にある団地は、地元の工務店が集まって、一つの街区を作っています。

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地区の人たちを3年間のワークショップを通じて作られたそうです。基本地元工務店の設計なので、建物自体の切れ味はイマイチですが、住み手の承諾なしにはできない特質があります。それが従来の隣人が近い生活感の良さを継続しているような印象でした。

普通の団地とは大きく違う点は2つ。一つは駐車場を街区でまとめてとっていること。駐車場がまとまると、道に沿った家並み感、道から近い住人の気配があり、街の親密感が上がります。

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もう一つは、アプローチ空間を共有すること。これはアプローチのスロープを共有することで個々で作った場合と比べ、大幅に省スペースとなることを考えたようですが、その結果、近接する数戸の玄関が集まり、近隣の顔合わせの機会が増えることになっています。従来隣りと近い関係で暮らしてきた集落の人には慣れた暮らしぶりが継承されているように思えます。(スロープを上がったところに4軒の玄関が集合)

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建築家の協会などから、単体の復興住宅の提案はなされたようですが町並みに対する提案はあまりなかったように思います。

高台移転でできた街が、以前の街にあったと思えるその地域ごとの雰囲気「土地感」をなくしているようで残念です

 

小嶋一浩の手がかり展

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私の好きな建築家の小嶋一浩さんのGAギャラリーでの展覧会。小嶋さんは昨年、急逝されました。私が大学にいたころ、活躍され始められて、常に注目している存在でした。施設の新しいしくみを提案し、それを具現化した新しい形の建物をつくってこられたように思います。

とくに学校建築では、そうした取り組みが成功し、新しい形態の建物により可能となる新しい教育のしくみを実現して高い評価を得ています。埼玉の新興住宅地では、小嶋さんたちの設計された学校の評判がよく、その町に住みたいと多くの住民が集まったといわれるほどでした。建築の力で街の評価を上げるのは、建築家にとってこの上なく名誉な感じです。

しくみを尊重した設計でも、理論的に頑なになっていくのではなく、各所に建築的な面白さも取り込んでいくので、楽しさのある建物になっています。建築に関わっている人しかわからないようなこだわりがあったりして、つねに学生が設計したような挑戦的な要素を感じられるところが魅力です。

展覧会は、スタディの過程で作られた模型やメモ、スケッチの展示と最後の仕事となった山元町役場についてのインタビュー映像が流され、楽しさを発見・作りこんでいく設計の様子がうかがえます。

インタビューの山元町役場は、この夏着工しました。出来上がるのが楽しみです。

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タイル視察

今掛かっている3物件のためのタイル候補をLIXILプレゼルームで見せていただきました。

和食料理店内装のグレー系の大判タイル

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住宅の外壁のためのテクスチャのあるタイル

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住宅玄関にベージュ系のタイル

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輸入タイルに比べ、国産品は色合い、面形状と一般的な公共建物でよく使われている印象のもので、こだわりのある個人邸には、そぐわない感じ。イタリアのメーカーなどは色もきれいでテクスチャもメリハリがあります。最近はイタリアメーカーが中国などコストの安いところで作っていて、価格も国産と変わらないものもあります。意匠性に引け目を感じている日本メーカーは、対抗せず機能面に力を注ぐことになっているようです。

輸入タイルについては、ヨーロッパでは外壁にタイルを貼ることは少なく、耐凍性のある外壁用のタイルはあまりありません。また色巾(柄目)のばらつきが大きく、壁に使うと日本人の許容範囲を越えてしまうものが多いです。

また日本で最も抵抗なく受け入れられるベージュ系は、諸外国ではほとんど人気がないので、あまり作ってくれません。たまによさそうなのを見つけても、すぐに生産中止になってしまいます。

このあたりを補うように、国内メーカーが頑張ってくれると良いのですが。国内メーカーも大規模開発時にその物件用につくる特注タイルは結構魅力的なものを作ってくれるのですが、在庫販売品は無難なものに限られているように思えます。

www.hattake.co.jp