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八武組 設計ブログ

ハッタケグミ:三重県四日市市の建設会社 設計メモです

坂茂展

TOTOのギャラリーで開催されている坂茂さんの現在進行中のプロジェクトを紹介する展覧会。

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当初、紙の建築で有名となりましたが、現在は木をつかったプロジェクトが多いようです。もうずいぶん前になりますが、大阪でも木造の4階建てオフィスを作られていました。

パリとスイスの大型プロジェクトの展示がメインでした。常にチャレンジングな仕事をされています。以前台湾のプロジェクトで協同したことがありますが、プロジェクト実現のための熱意が印象的でした。実現難しいそうな計画でも、具体的な話をドンドン進めていきます。

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静岡の歴史的町並み

 

昨年行われた「みえ歴史的町並みネットワーク」の会で講演のあった静岡の歴史的町並みをみてきました。

森町 城下

秋葉街道の宿場町として栄えたところです。城下町なので町並みにも防御の工夫があります。街の中で街道は湾曲しており、道に沿う家々の輪郭がのこぎりの刃のようにギザギザになっていて敵を待ち伏せるのに都合のよい形態です。街の中央でクランクしているのも防御のためでしょう。

 

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現在主要な道路は街の外を通り、家々が並ぶ旧道は一方通行となっており、町並み保存には適した条件です。

家々の配置は古くからの形態が守られているものの、古い建物は数軒で歴史的町並みとして感じるにはいまいちです。町並みの案内パンフレットを用意していたり、町並みの保存には高い意識があると思われます。

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掛川市 日坂

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東海道の宿場町。講演のときは案内がなかったので、意識していなかったですが、箱根・由比・日坂・鈴鹿東海道の4峠難所で宿場町でも著名なところです。

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谷筋なので国道1号線はバイパスとなって街の上に通っていて少し悲しい感じがあります。街の中で古い建物は市で管理された数件です。ここも町並み感は薄いですが、町の人たちの志は高いです。ほぼすべての家に、昔の屋号の木札がつけられています。空き地も新しく建てた普通の家にもです。住む人たちも、積極的に訪れる人に話しかけているようで、数人の方から町並み・東海道についてお話を伺いました。

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夜泣き石で有名というのも伺って気が付きました。街にあった北斎の絵にも夜泣き石が描かれていたのも見過ごしていたのですが。(真ん中の白っぽい丸い石です)

NHKでもやっていた夜泣き石は国道1号線を通す際、移設されて今も残っています。

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これが夜泣き石。

どちらの町並みも古くからある建物はわずかです。県内の伊勢街道や東海道のほうが町並みが残っている感が高いところが多いように思いますが、町の人の意識は負けているように思えます。

 

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三河のお寺

三河にある建築家のつくった比較的新しい2つのお寺

西光寺(岡崎市 2005年竣工)

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設計は吉村靖孝さんです。オランダの著名な設計事務所で働いた経験をお持ちで注目されている若手の建築家です。

このお寺は帰国後、間もない頃に作られた初期建物です。錆を意匠的につかうコールテン鋼で箱を積み上げたような外観で、書籍に掲載された印象は突飛な建物すぎる感じでした。

厚い鉄板は全溶接して完全防水と構造体として使われてます。内部は階段状外皮のみで柱はありません。屋根と天井の厚さ、壁の厚さもほんのわずかで、薄い皮膜だけで建物ができているのが感じられます。

写真では、周辺との違和感があるのではと考えていましたが、実際の印象はあまり違和感は感じませんでした。境内のほかの建物との関係がきちんと整理されていることと樹木の存在で近隣には突出感がありません。また建物自体もコールテン鋼などの素材感があるので、お寺としての佇まいも、許容できる感がありました。

内部は同じ形状の窓ながらちりばめられた配置と断熱材としても役立っている内装の木毛セメント板の壁・天井と開口を隠すパネルが少し不安定な納まりになっていることなどは、お寺としては受け入れられにくいように思えました。

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全体としては、素材の選択、薄い構造体でつくる軽やかな空間は好感がもてます。

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コールテン鋼の枠にサッシュがきちんと組み込まれています。開く窓もスマートに収まっていて、全体の雰囲気を害していません。写真中央の入り口はステンレスの鏡面仕上、枠の存在を見せずに開口の印象を与えられ、コールテン鋼以外の要素を消すセンスある選択。

正願寺(豊川市 2014年竣工)

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設計はアーキテクト5の堀越英嗣さんです。私は学生の頃、設立したばかりのアーキテクト5でアルバイトしていたので、設計スタイルはよく知っています。

きちんとした設計で実績がある方なので、先の西光寺に比べると各段に落ち着いた印象の建物です。使用している材料は特別高価なものはありませんが、上質感がありました。

古い門もうまく生かされています。

設備的にも配慮され、太陽熱を利用した暖房設備が目立たないように設置させています(一般の方だと気が付かないと思います)。屋根の最上部にあるガラスが太陽熱を取り込み設備です(天窓ではありません)。

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中庭を囲んだ会館機能が本堂に連続しています。こちらも落ち着いた雰囲気です。

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本堂内部。鉄骨造のR状の構造体に木梁の意匠が掛けられています。

壁要素はすべて障子に引き戸を組み込んで採光調整のできる建具となっています。

(外部から見ると単なる紙貼り単純な壁に見えます)

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外壁は塗装された窯業系の板に木板が貼られたものですが、全体としての印象は木貼りの建物のようなグレード感があります。

細部にわたり、きちんと設計されることを長年続けてこられた方の流石な建物です。

 

おまけで立ち寄った愛知産業大学 言語・情報共有センター(岡崎市・2014年竣工)

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設計はStudio Velocityさん、若手い方々です。

この建物がないときはどうなっていたのか疑問な立地で、現状この建物で周辺建物をまとめている印象です。用途はバス停とゼミ・ミーティングスペースでわずかな室内面積しかありません。

全体に広がったフラットな屋根が場所の特別感・周辺の建物をつなぐイメージを与えています。傾斜地にあるため、アプローチ道路のある下側からは階段上に各室が一見できて、様々な活動が同時に見え、建築の楽しさが感じられます。

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室内と芝生のみを一枚の面の屋根で覆う単純な構成が、いまどきのざっくりした建物感覚なのでしょう。私の世代なら外部にも活動の場として要素を足すなどして、建物の構成要素を複雑にしていると思います。屋根の作りも鉄骨梁にパイフ柱が取りついているものそのままな形で、緩い印象が良い感じで現れています。

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屋根断熱はあるようだし、壁もそれぞれ違った石が貼ってあって、素材感もあって建築としてきちんとしてます。

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役員室 改装

10年来、お世話になっているクライアントの役員室の改装工事がほぼ完了。什器が入りした。

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銀座の古いビル内です。竣工当時からのセントラル空調や直管の蛍光灯の撤去、昔よく使われた砂目の壁仕上げを一新しました。

建築工事は古いテナントビルでの改装ということと将来のレイアウト変更を考え最小限とし、色合いのみを調整したシンプルな内装としました。

モジュール家具を採用し、秘書ゾーン・社長ゾーンに空間を分けています。この家具は50年以上継続しているもので、引き出しやマガジンラックなど様々なパーツで組み上げることができ、将来の改装にも対応できるものとなっています。つくりも上質で部屋のグレードを上げる効果も十分です。こういった家具づくりは、欧州のメーカーが得意とするところで、国内メーカーは価格の安いものやデザイン寿命の短い新製品指向になってしまっているのが残念です。

現状モノトーンですが、アートワーク・植物などで少し柔らかい印象に変えていきたいと思います

 

 

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みつわクリニック 見学

安城駅前のみつわクリニックの見学会に行ってきました。設計は藤井亮介さんです。

藤井さんは、旧職場で最後の物件を一緒に担当した仲間です。

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心療内科・精神科のクリニックで、患者さんに対する配慮が特に求められる施設です。

ユーザーの要望をよく理解し、建物に反映させることが建築計画の基となっています。

閉鎖的でなく入り易くありつつ、外部からは見られにくいということがこの形態の理由だそうです。

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最上部の天窓は、採光、空間の抜け、効果的な自然換気などに役立っています。

空間の組み合わせとモジュールを守った表現で丁寧な設計がなされた特別な印象がありました。

施設の要求から汚れない内装を選択するため、床、壁がビニル系素材となっていることが、やさしい空間づくりの妨げになっているように思えました。機能的な要求と心理的な効果を両方を満足する方法がないものかと。

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地方都市の建物

仲良くしている若い設計士さんが、昨年一番の注目作と言っていたので、新潟県十日町市の文化交流センターなどが入る「分ジロウ・十ジロウ」を見てきました。設計は青森県立美術館新潟県の潟博物館、ルイヴィトンを設計で著名な建築家 青木淳さんです。青木さんは独立当初から(たぶん磯崎事務所に在籍のころから)内部と外部が交錯した建物をつくり続け、その構成の空間づくりにおいては日本一と思います。今回見に行った建物は既存改修なので、内外の交錯する動線はつくりにくかったと思いますが、雪国の特徴である雁木も活かして、車道・雁木・吹抜外部スペース(吹抜で3層目が室内)・室内が全開口の建具で一体となりえるグラデーション的な内外のつながりを持っています。

派手な空間はありませんが、よく公共建物で使われる既成の建築パーツは使わず、センスの良さを感じる独自の雰囲気を作っています。こういった作りは手間が掛かりますが、設計者や施工者の労力が感じられ、空間の楽しさも使う人に訴えてくるように思います。建物としては地味ながら、使う人に少し新鮮で、少し幸せな気持ちにさせる地方の建物の良い見本のように思えました。

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十ジロウ 1階はギャラリー、2階は貸ミーティングスペース、3階は創作スペース

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雁木内側の吹抜外部スペース

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ギャラリー内部、明るいところが道路。

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事務室もオープンな感じで身近な施設感があります

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鉄のパイプと板を使った手摺

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2階の貸ミーティングスペース。上部格子天井に木製柱を固定する仕組みで多様な間仕切りに対応。

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ぼんやりと光の色が見えます

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3階の創作スペース。陶芸などできるようです。廊下上部にダクトがまとめられ建具上を通ってます。ルイス・カーン(アメリカを代表する建築家)の建物も同じようなことします。

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こちらは分ジロウ。交流センターやシルバー人材派遣の事務所がはいってます。

十ジロウも同じようなベージュの外壁と白い内部。ベージュは本来ちょっと古臭い色使いですが、ここはそんな印象は薄く、やわらかくちょっとおしゃれな感じ。

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道路側から

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内部から。建具を開けると大きくつながります。

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横にある管理・事務スペース。同じように一体化しそうなつくり。掲示板などで管理している人の様子は微妙に隠れてます。

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2階にある会議室。都会的なセンスを感じるカーテンでくるまれています。入り口側にも回るので視線も柔らかく遮り、個室感を出せます。

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裏階段もきちんとしてます。

この建物の大きな特徴の一つは、コンペによって選ばれた設計者と市民が話し合って施設をつくっていくことにあります。コンペの審査員に有名なコミュニティーデザイナーの山崎亮さんなど、地域を活性化で活躍するメンバーに委託したことも効果的だったようです。青木事務所は設計開始段階に現地に分室をつくり、所員を常駐させ設計を進めたそうです。分室には地元の多ような方々が出入りし、地元の実情などを設計者が実感して施設にアイデアを盛り込んでいったようです。

良く知った人たちの施設と思えば、設計者がいい加減なこともできなくなるでしょうし、設計者が一生懸命考えるところを感じた市民は、これまで経験したことないことも、許容しやすいと思います。その成果が、ちょっと危うかったり、コストが多少かかっても、地元独自の魅力ある建物づくりにつながったように思えます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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七宝展

東京庭園美術館で七宝の展覧会みてきました

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昨年、住宅をつくった稲沢市の手前、あま市が日本の主産地と知って、七宝に興味深々となりました。

展示されているのは明治・京都の並河靖之さんの作品でしたが、展示の説明の中であま市からの影響についても触れられていました。

展示の七宝の凄さは、その緻密さです。細かすぎて普通には見えないほどで、拡大スコープが貸し出されていました。それなしでは鑑賞できません。

下絵でさえ、見えないのに、釉薬の仕切りの板を据え付け、その小さな隙間に釉薬を正しく入れる技術は、とんでもない集中力と根気が必要に思えます。

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一つ花びらが2mm以下の大きさです。背景の黒もとっても深い。黒だけでなく紺なども入っているそうです。

 

七宝は一人の芸術作業というより、多くの職人が関わる工芸品。ある意味、工業製品で並河さんはかなり財を得たようでした。主に買い手は外国人で、英国王室も顧客リストにありました。国内需要を伸ばすことはできず、外国からの受注が少なくなるとともに衰退していったようでした。

日本人の作る自然物の表現は、柔らかく繊細で、日本独特の魅力が感じられ、世界中の富裕層へアピールできる現代は、当時以上に有望な産業になるのではと思えます。

陶器に比べ、薄い素材に模様を描く七宝は、たばこや香水、名刺などの様々な実用に供するケースに使え、販路が広いように思えます。

明治七宝の見所、現在の七宝の製作法の上映もあり、七宝をよく理解できる展覧会でした。

また庭園美術館で七宝の展示は空間とマッチしているイメージですが、七宝の細密さに引き込まれ空間は忘れるほどでした。

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www.hattake.co.jp