八武組 設計ブログ

ハッタケグミ:三重県四日市市の建設会社 設計メモです

みえ木造塾 堀部安嗣さん講義

第5回目のみえ木造塾の講師は堀部安嗣さんです。今回も三重大学レーモンドホールです。

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堀部さんは昨年、日本建築学会の最高賞といえる作品賞をとられた方です。吉村順三先生の系統で住宅をメインに設計されています。

吉村一門なので、建物の細部・性能については厳しく作られます。その中でも堀部さんは、現代的なセンスが感じられるので、若人にも人気があります。

今回の講義は、堀部さんの好まれるもの(主に古い建築)を紹介して自分の建築感を説明するものでした(たぶん、聴衆の大半が実際に住宅を作っている人たちなので、自作をメインの講義とするのを控えたのでしょう)。

10年ほど前に、お話を伺ったときは、正方形や五角形のプランで住宅をつくることをご紹介いただいて、恣意的なことを避けて幾何学で解こうとされていたように思えましたが、今回の講義では、ご自身の好きなもの、たとえば古い建築のもつ素朴で力強くかつ心地良いところなどを、ただつくりだすことを目指されているように感じました。

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自作の説明としては特に最近竣工したクルーズ船の説明をされていました。

木のもつ、継続性や材として調湿・吸音などの特性に注目されているようです。

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蓄熱式床暖房

現在建設中の平屋住宅に、蓄熱を活かした床暖房を採用しています。

べた基礎のコンクリート躯体を蓄熱要素として使います。基礎の外側(下部も)に断熱を設置し、熱を逃がさないようにしています。シュミレーションでは一般的な熱パネル式のものの半分以下のランニングコストで賄えます。

床暖房の仕組みは温めた空気を循環させるものです。空気はダクトの中を通るので、床下を通してもゴミやほこりの心配はありませんし、直接その空気に触れることもないのでクリーンです。

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こんな感じでダクトが通ります。本来はコンクリート内に打ち込むのですが、這わすだけでも十分な効果を得られるのは実証済みです(写真奥の方はコンクリート内になってます)。この上に床を張り込んでいきます。将来地震などで万が一ダクトに穴が開いてもさほど支障が出ないのが、水循環より安心な点です。

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熱交換ユニット部。ここで温めて空気を循環させます。今回の熱源はヒートポンプ式です。電化住宅のために、ヒートポンプを選択しました。ちょうど点検口サイズになってる熱交換部と外部の熱源機器は将来取り換え可能な形で設置します。ガス熱源にすることもできます。メンテナンスもこの部分のみです。

スウェーデンのシステムで現地ではかなりの実績があります。国内でも蓄熱の有効性が取り上げられ増えてきています。在宅時間が長く、家中くまなく暖房しておきたい(ヒートショックのない)家を望まれる方に最適です。

 

 

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喜多家 (石川県)

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金沢に近い石川県宝達志水町にある国重要文化財1971年指定の住宅。明治村の館長 中川武先生(早稲田大学名誉教授)が最も立派な民家としてお話いただいた住宅です。

喜多家は豪農で、年貢を集めたりする役所的な働きもしていました。そのため住宅には農民である住人用のスペースと武士が来て、調査などをする場所が区分けされています。また前田家の参勤交代時の陣屋としての機能もあり、一般的な住宅とは異なった構成になっています。

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一番の特徴は、建物が周囲より、1.5mほど低く掘り下げたところに建っていることです。説明によると外様大名であった前田家の陣屋として、目立たないようにしたためだそうです。周辺に木々を配し、敷地の奥まで入らないと建物の大きさはわかりません。

アプローチは平地なのどんどん下がっていく違和感があります。説明をしてくださったのは喜多家の方だったようですが、現代の観光資源としては、マイナスと考えておられるようでした。

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窪地にある建物として、水が溜まると心配されますが、ここは海岸を車で走れる千里浜なぎさドライブウェイのすぐ近くで地面は相当な砂地で水が溜まることはないようです。

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玄関は使用人用、農民用、武士用、殿様用に4つあります。殿様用が一番手前に突き出ていて、位が下がるに従って後退しています。写真は奥から殿様用。

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農民のゾーン。役所的な仕事をしていた部屋、天井があってあるのは、ある程度の地位を認められたので許されているとこのと。食堂は板の間。寝室などは奥の別棟的なところにある。

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役人武士のゾーン。一段高くなって、空間的な区切りを持つ。

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武士が農民からの話を聴取した部屋、外の農民と格子隔てて面談。格子は内開きの断面形状で外から中の武士の顔が見えにくく作られています。武士と面と向かわないことで包み隠さず、意見が言えるようになっているそうです。

殿様ゾーン。陣屋(宿泊所)となっています。

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一間幅の縁側廊下は敵に槍で襲われた際も届かないようになっています。立派にみえないようにという配慮で部屋は小さいです。

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殿様の寝室。柱は漆塗りで上質感と共に耐久性を増す意図です。

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その裏には警護の侍が隠れていた小部屋があります。昼間は茶室として使われるようです。気持ちが柔らくようにと壁は緑色です。もともとは殿様の寝室とドンデン返しの扉で繋がっていましたが、明治以降必要なくなり、壁になっています。文化財指定で現状維持が強いられ、復旧できないのが残念とおっしゃっていました。

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庭は、砂地のため水が溜まらず、枯山水の景色となっています。池に見立てた石の手水があります。現状背後の木々が伸び放題のようで、庭として景色は今一つのように思われます。保存対象となっているところの庭木の手入れ(剪定)をいかにしていくかは、それぞれ守るべき観点があって難しいところがあると思います。

中川先生、一押しの古民家でいろいろ興味深いところがありましたが、去年見た兵庫県たつの市の永富家のほうが、使っている木材などが他でみたことないような、大きな材だったりし立派さは上のように思えました。永富家は、いまだ当主さんが茶会などで使っていて、その設えとかもセンス良くやられていたので、品よくみえるところがあらのでしょう。

 

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能登 輪島

このところ、輪島うるしの方々と交流があったので、お誘いのままに工房見学に。

輪島の街は、どう行っても長い山道を越えてのアプローチとなり、集落の孤立感を実感します。輪島のうるしやさん達は、ヴィトンやシャネルなどフランスの一流ブランドから製作依頼を受けるなど、地理的な隔たりを超えて活躍しています。

昔ながらの民家や蔵の中を仕事場として、世界のニーズに応えています。

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住宅も昔のままの板張りが多く残ります。以前はほぼ100%、地元大工さんの作る家だったそうですが、今は2割くらいがハウスメーカーになったと聞きました。

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外壁の板は、能登ヒノキといわれる地元独自の木材とのことです。能登を南限とするアスナロの1種(うるしの基材もアスナロが多いので)ではないかと思いますが、耐腐食性が高く、多くの家で使われでいます。

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輪島の近辺は切り立った断崖の海岸が多く、小さい集落が孤立しています。家々は黒い瓦葺きに輪島同様の板張りが多く、統一された美しさがあります。

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間垣の集落。近年は景観保全のため、市が補助しているとのことでした。集落を結ぶ海沿いの道は急で細い山道しかなく、孤立感十分です。

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ラ コリーナ近江八幡

滋賀県近江八幡の郊外にある老舗和菓子屋さんのメインショップと本社などが集まった施設(2017年7月に新たな店舗が追加)です。建築設計は、東京大学の建築史の名誉教授でもある藤森照信さん、ほかアート・インテリアデザイナー、農業や生物などの専門家など著名な方々がこの事業に参画しているようです。

建物は藤森先生の建築歴史観を反映した生きた植物の使った外観表現と手作り感のあふれる設え、素朴な印象を与える特異な形態で、この施設のテーマである自然と共に生きることの大切さを伝えることに、ベストマッチなものです。いろいろなデザイナーが力を発揮して、都会の人たちにも通じるセンスの良さが見られます。SNSの素材としても受けの良いものが揃っています。施設は大人気で、自家用車の来場者でかなりの台数の駐車場も入れないかと思うほど盛況でした。

メインショップ

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外観のイメージは草屋根と土壁。前庭の植栽が行き届き、アプローチから別世界な感じ。内部は漆喰壁に墨のチップが埋め込まれた意匠。墨のチップは、藤森先生の友人たちのつくる素人建築集団の施工と思われます。先生曰く、プロの職人の通り一辺の仕事のできと、素人の思いを込めた出来栄えは若干素人は劣るが味わいは、素人仕事が勝るのでは、と素人集団の作業が多くあります(素人と言っても陶芸家だったり、作家さんだったりでセンスの良い方々)。

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メインショップの裏は田んぼを囲んで、施設が配置されています。田んぼへの水路ではホタルを育ているそうです。アグリツアーのような形でスタッフが案内するツアーもあるようです。

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変な塔のある建物は、本社オフィス。内部は見られませんが、外部に視線が抜け、自然を感じながら仕事ができる場と聞いています。

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新しくできた自然食品を売る店舗。古い乗り物の実物が展示してあり、質感の大切さを感じる雰囲気作りです。

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外部のフードコート。ショッピングセンターによくある内部のものには、不健康な感じをいただていましたが、外だと気持ちよさそうです。

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企業理念を楽しさをもって、うまく表現していると感じる施設づくりだと思います

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空き家 活用

四日市市新浜町の空き家をリフォームして賃貸活用する計画です。

市内橋北地区は鉄道の駅には近いのですが、高齢化が進み、土地・建物が有効に使われていない現状です。

築30年。1階はピロティの駐車場、2階1DK・風呂なしで当時は離れ的に使われていた物件を、2階1R・風呂付の戸建て住宅に改装しました。

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 ユニットバス以外は古い造りを尊重して、素材感の感じられる無垢材のフローリング・壁も塗装としました。そう大きくない戸建てですが、できるだけ自由度高く使えるよう矩形の1室空間となっています。窓も多く開放的です

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みえ木造塾 第4回

第4回のみえ木造塾は山辺豊彦さんによる構造に関する講義です。

木造軸組みをつくる際、力の流れを追って考えることの大切さを図や倒壊した事例を示し、説明されました。

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熊本地震では、新耐震指針(1981年)後の家屋も20%ほど倒壊していますが、その大半は2000年(阪神淡路震災後の改正)以前のものという統計を示されています。2000年以降は耐震要素のバランスや層間変異角のさらなる指定があり、現状の規範に従えば倒壊の危険性は少ないとのことです。そうした規範以上に、守っておくべきポイントをご享受いただきました。また各地の予想地震動が地図上にあらわされた地震ハザードステーションマップを参照して耐震性能を考慮することも重要とのお話でした。

後半は載荷試験装置による梁の破断実験です。人工乾燥・天然乾燥によるたわみと強度のちがい、樹種による違いを実感するものでした。

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基本的には人工乾燥は繊維間の湿潤さを失わせ、カサカサで剥離に対して粘りが失われます。実験で破断した材の剥離面はすべすべと感じるくらい綺麗な面となっていました。強度的には乾燥材が最大耐力的には勝りますが、ネバリという面では、乾燥不十分のほうが勝ります。時間経過の後の収縮変化などの問題があり、採用できませんが乾燥していない木はネバリ強く、人を守るとも言えます。

樹種については、杉・米松・檜で比較しました。柔らかく強度が小さいと言われる杉はやはり弱い結果です。大断面でも比較的安価なためよく使われる米松は、当実験では耐力的には優れていました。ネバリは少ないので耐力を超えると一気に壊れます。

上質な和材として多くが期待していた檜は、今回の実験では、米松に及ばす、杉より若干良い程度で皆をがっかりさせました。

今回の実験で材の耐力に大きく影響したのは節の存在でした。載荷していく経過で節周りからの裂け目や節による材の分断がみえてきます。節の位置や量が材の材種以上に耐力を左右することがっきりわかりました。今回の載荷は通常の想定強度をはるかに超えているので、節の悪影響は実際の現場ではさほど心配はいらないのですが、特別大スパンになる部分では節の有り無し・位置を注意したほうが良いということになります。

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杉の人工乾燥材。キレイに木目に沿って割れてます

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左端が期待ハズレだった。樹齢100年ほどで自然木に近いものだそうです。見た目は上品で、生き節の様子もきれいでしたが、節の部分が欠点になりました。その右が米松、生育上、節も少ないです。木肌感は美しいとは言い堅いですが強かったです。

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www.hattake.co.jp