八武組 設計ブログ

ハッタケグミ:三重県四日市市の建設会社 設計メモです

製材所視察

進行中の住宅の外壁材の候補となっているヒノキ材を松阪市内の製材所に見に行ってきました。

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120年もののヒノキ。通常のものより細身に育てている分、目が詰まっていて製材した見た目は趣深いものになります。少し大きな材となっているので柱としては使うのであれば、寺社のような大きな建物向きです。

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今回は表皮のついているところも使って、コスト削減と意匠的な柔らかさの表現の両得を目論んでいます。

歌舞伎のヒノキ舞台に使う原木の端っこをうまく使えれば、耐久性も美しさも格段に良いものになります。

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以前活躍していた焼却窯。鉄板の建物みたいで魅力的です。

その後、ウッドピアの木材加工場も見学。床・壁に使う仕上げ材製作の加工工程を工場内を見学しつつ、細かな配慮点について説明していただきました。製材所や加工工場の方の木への熱い思いの入ったお話に、木の良し悪し見極める一般の方の見識を育てる必要性を感じました。

 

稲沢の住宅

稲沢市に設計施工で作っていた住宅が竣工しました。

31坪の若い夫婦のための家です。小さくて可愛い印象になるように階高を抑えたり、屋根勾配を少し急にしたりしています。周りの住宅より小さなボリュームとなっています。

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外形は小さくなりましたが、内部は吹抜や屋根形状を活かした勾配天井やロフト空間をとって狭さを感じないものにできてます。

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お施主さんの希望に合わせ、いつもより強い印象のインテリアになってます。お施主さんは親しい間柄の方なので、こちらの気持ちや心配している点など十分相談でき、こちらの想定していないアイデアもいただいて、新鮮な結果となりました。

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吹抜のリビング。2階部分の大きな窓で明るく暖かな室内です。夏は大きく出した屋根で直射は遮ります。テラス部の半透過の屋根には可動シェードがついてます。

窓メンテ用の通路は細い手摺として遮るものを最少としています。写真では、より見えにくくなっていますが通路下にホームシアター用のスクリーンも埋め込んでします。昼間は広がる水田を。夜は大画面を楽しめます。

 

祝!竣工式

今年の夏に完成したオフィスの付属施設となる社員寮の竣工式が行われました。(日柄が良く本日の式典となりましたが、一部工事は残っていますが)

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優しい感じにしたいというご意向にそって、柔らかな色合いの外観としました。

寮なので、入居者の負担を減らすように、家具・カーテンも準備しました。外観のイメージに合わせて白い壁とベージュ系の木の色合いでまとめてみました。

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経年の使用にも耐えるよう交換しにくい床は無垢のフローリングとしました。この本物の木の存在感で、インテリアの印象がぐっと自然志向的なものになったように思えます。

 

第1回「みえ歴史的町並みネットワーク・ゼミ」

第1回目の「みえ歴史的町並みネットワーク・ゼミ」が催されました。

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東日本大震災の後、起こり得る南海トラフ地震などの震災に対する備え、復興のための事前準備を研究する会として、有志で2年ほど活動してきたのを、今回から、建築士会・日本建築家協会・行政・市民活動団体など一同に集まる、オール三重の会に広げた第1回目の会です。

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前半はこれまで活動報告と静岡県での同様活動を進めている塩見寛氏(静岡県ヘリテージセンターSHECセンター長)の静岡での活動説明でした。

静岡県内の歴史的町並みの特異性の説明を通し、一般の人たちへの地域の歴史的意味に関心をもたせることや町並みを維持していくための各団体の協定・行政との連携の現状をお話いただきました。

後半は「町並み保全と地元主体のまちづくり」と「空き家対策と民家の活用」と題する2つの分科会が行われました。

私の参加した「地元主体のまちづくり」は、白子・関・二見・一身田・松阪・亀山の町並み保全について活動者自身からの報告です。

一般に町並み保全は観光化に向けて行われますが、今回の事例の大半は日常の生活する場として整備していくものです。住民に自らの町の価値を認識させることで、永く定住しコミュニティーを維持させていくことが目的です。

これらの町は観光地化された町並みと違い、訪れた人にもこんな町に住みたいと感じさせるのではと思います。

今回のゼミは、防災的な内容は少なかったですが、県内さまざまなところで多く方が活動していることを知る会でした。

 

トラフ展

TOTOのギャラリーで行われている、プロダクトデザイン~建築設計のトラフさんの展覧会。

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これまでの仕事を紹介する展覧会ですが、ジオラマ的に紹介している展示物そのものが楽しそうで、個々のプロジェクトの印象が薄いほどです。別室映像展示もそのジオラマ展示の中に入った様子を写したもので、かなりの熱意を入れたことがわかります。

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これまでの作品のなかをNゲージの丸太列車が走ります

キレイな形を見せることより、物のなりたちや、見方をかえることでの気づきを見せるデザインのやり方は、建築家のなすデザインとして、あるべき姿だと共感します。それをキレイ見せるところが優れている方たちなのでしょう。

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養生ネットのプリーツ間仕切り

汎用品をつかって、これまでにない魅力を見せることも、コスト増は回避できないので、それを許容させる昇華度合、出資者の理解と余裕がないとなかなか通らないです。

 

 

愛知県緑化センター

愛知県豊田市昭和の森の中の展示・集会施設。設計は先日行った「みんなのハワイアン」と同じ瀧光夫さん、得意分野の植物関連施設で1975年竣工、当時BCB賞(建設業連合会)、2004年には建築家協会の25年賞を受賞した正統な建物です。

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建物は自然の丘に埋め込まれた下部とその上に浮かんだ四角形のリングの構成。下部2層は土を削り出したような小叩き仕上げのコンクリート造で周りの地盤に各層で接しています。

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上部のリングは鉄骨造で全面ガラスでコントラストが明確です。リングで囲まれた空間は屋内化された植物園となっていて(雨風の当たらないところで育てるのは結構難しいと思いますが)内部外部の植物が視覚的に混在して、建物も内外が一体化していて、ほかでは体験できない空間です。

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ガラス屋根の内部空間。アメリカの建築家ケビンローチのフォード財団ビルやディアカンパニーのような植物が身近にある建築空間に似ています。

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ラウンジや管理事務室のあるリングの全面ガラスもミラーガラスが使われているのも、ちょっとアメリカ的。

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植物を建物のいたるところに配置しています。建物防水上は問題が起きやすいところですが、思う存分やってます。管理運営している人たちの理解がないと難しと思います。

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雨水だけでなく、汚水排水も土中にあるため、植物の根との攻防はかなりあるようです。

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動線の設えも、クランクする経路や石積みとコンクリート壁の使い分けなど当時の建築家らしく、きちんとしています。

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いろんなレベルで外の地面に接していて迷路な感じもあって楽しい空間体験でした。

紅葉の映えるころで訪れるには良い時期の祝日でしたが、街の主企業の工場が稼働しているので、平日のように来園者は少ないようでした。

建物の隣には友好関係にあるオーストラリア庭園が造られています。オーストラリア産の植物は、変わった花や実、葉の色もアジアの濃い緑とは違った色合いで見た目にも興味深く、乾燥にも強いので適当に育てるには都合よさそうなので、最近注目しています。

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阪田誠造さんを偲ぶ会

建築家 阪田誠造さんを偲ぶ会に参会しました。会場は坂倉準三・前川國男吉村順三共同設計の国際文化会館でした。阪田さんは私が前職の坂倉建築研究所入所当時に所長でした。入所当初のJRセントラルタワーズの設計から、関わった仕事を通し、建築家のあり方など多くのことを教えていただきました。

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お元気にお過ごしだった今年7月に急に体調を崩されて、1日も置かず急逝されました。この会は阪田さんと交友のあった著名建築家32名の方が発起人となって開かれた公的なお別れ会です。日本代表する著名建築家の方が多く参会し、参会者は300人を超える盛大なものとなりました。会は阪田さんとお別れをしみじみ思うというよりは、阪田さんのそれぞれの仕事に関わった施主や設計メンバーが当時の思い出や近況を交わす明るい感じで集う会で、いつも和やかに人と接していた阪田さんに相応しい会でした。

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建築家 槇文彦さんのご挨拶。ほかの皆さんも阪田さんとの思い出をお話されました。

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