設計協力から関わっている結婚式場増築計画、鉄骨上棟いたしました。
既存施設に対し目立った感じにならないよう、黒のメッシュシートで覆っています
青い空に単一の黒シートに包まれた建物の景色は、ちょっとワクワクする気配があります
世田谷区尾山台に竣工した尾山台みどり保育園の見学会に行ってきました。設計の石川恭温さんは前職 坂倉建築研究所で共働した仲間です。
東京では保育園の建設ラッシュです。都心では広い敷地は望めないので、どこも園庭の確保とセキュリティーに苦労しています。石川さんも閉鎖的な施設となることを避けることに努力されたようです。
建物はセキュリティーのための塀が外周をめぐっていますが、その壁は南東に向かって低くなって、外からの視線を受けるように街に開いています。屋上とそこから地上に続く斜面を園庭としています。避難の動線と遊具を兼ねた滑り台があって上下につながる園庭を楽しめる形です。
内部は明るい色の木と塗り壁のやさしい印象で、設計者の優しい人柄と素材感を大切にする坂倉研究所時代に共有していた設計志向が感じられます。
子供の施設ということで、曲線を随所にいれたそうです。
店舗設計の相談を受けて、福岡に現地調査に行ってきました
周辺の様子をみるため、繁華街天神あたりを散策。繁華街天神のとなりの大名町に小学校をリノベーションした施設がありました。
1階は起業したい人たちへの相談所とカフェとかになっていて、2階より上階は。企業の事務所になっています。古い建物の味わいをうまく生かした現・都会風のインテリアで、シェアオフィスのような使われ方もされています。
より地元に近い人たちが小オフィスで活動を始めている感じで、東京よりも現実的、着実な印象を受けました。小学校の近隣は小さなお店が集まるところで、天神の駅にも近く利便性のよいところです。
地元の若い人たちが集まって、地域を盛り上がるには良いところだと思います。
全国の地方都市の繁華街近くにこのような活動の場があると良いと思いますが、名古屋の大須あたりでも、このような施設があるのでしょうか。
20年以上のお付き合いとなる調布市立武者小路記念館さんに、小改装のご相談を受けて伺いました。
記念館の建物は1985年の竣工です。まだ図面は手書きのころで、設計者は細かなディテールを競っていた時代でした。既製品を使うことは少なく、ほとんどの部分がこの建物だけにつくられたものです。素材感を重視して手を加え、丁寧に空間を作っていく良いお手本の建物だと思います。小さい建物ですが若い設計士さんにぜひ訪れてもらいたいと思うものの一つです。
単純な形ながら、実篤先生の大らかな印象につながるムクリのある屋根が特徴です。
エントランス部はスチールのサッシュとコンクリート。打ち放しと小タタキ仕上げで表された実篤先生自筆の「日々是好日」が程よい意匠のエントランス壁面を作っています。
記念館のある場所は、水のあるところに住みたいと池のあったこの地を選ばれ、晩年の20年間を過ごされました。調布市の公園となっている敷地には、アトリエとしても使われた住宅が残っています。昭和36年築の木造住宅で基本和風のプロポーションですが、暗くなる北側斜面側の玄関にはトップライト、池を望む側には大きな開口に屋根付のテラスがあったりする現代的な要素もあるつくりです。土日は内に入れます。
この旧邸については東日本震災前に耐震改修をさせていただきました。その甲斐あって大きな揺れにも、遜色なく無事に建っています。従来の開放感や実篤先生の活動の跡が残る土壁を残す工夫が報われた思いがあります
伊賀上野城下町が日本イコモスにより20世紀遺産に選定されたのを記念してシンポジウムが伊賀市ハイトピア伊賀で行われました。
イコモス(国際記念物遺跡会議・International Council on Monuments Sites)は1965年に設立された国際的な非政府組織で文化遺産保護・保存の諮問機関としてユネスコの世界遺産の判定に関わっています。
前半は日本イコモスの事務局長 矢野和之さんによる基調講演です。
今回選定された日本の20世紀遺産 21選の紹介とその選定理由の説明でした。20世紀遺産選定基準は、世界遺産選定と同様に世界基準の評価となっているそうです。
20世紀遺産選定の要点は
・20世紀に始めて現れたもの
・19世紀からあり、20世紀に発展したもの
・歴史的事件に関わったもの
・伝統と20世紀に現れたもの対比、調和があるもの
という観点で歴史上に残すべきものを選定しています。一般的に近代建築の価値を意識しない傾向にあるので、歴史の中の欠落を心配した対策です。
原爆ドームや国立代々木体育館も選定されていますが、建物単体の選定でなく、京都南禅寺界隈や代官山の街並みなど、周辺地域も含む環境を保存しようとするものです。
伊賀上野城下町は上野城下町と坂倉準三の近代建築群との一体で選定されました。江戸時代の城・城下町の街並みとコンクリート造近代建築の調和した景観は世界唯一と矢野さんも説明されていました。
後半は、三重の町並み保存活動に多数関わっている三重大学の浅野教授がコーディネーターを務めるパネルディスカッションです。パネリストはドコモモの鰺坂徹さんと伊賀市内の旧家を活用している映画監督の塩崎祥平さんと明治時代からの地元書店の店主の岡森史枝さんです。
鰺坂さんは、時代を超えて存続する建築は、時代時代の積み重ねでその価値を上げて行っていることをフィレンツェのドーモが各時代の増築を残しつつ、現在に至っていることなどを例に挙げたお話をされました。
映画監督の塩崎さんは、地方の魅力を抽出する映像作りの価値、地元発見の魅力を、ご自身の出身地を舞台とする映画づくりの経験を話されていました。
代々地元の岡森さんは、坂倉準三の学校に通われた思い出や自慢できる建物を日常的に見て育ってきた経験とご自身の取り扱っている書籍について伊賀の街について書かれた本が他の街のものに比べ著しく多く、伊賀に人たちの町への関心が高いことを感じているとのお話しでした。
今回の会場には満席の100名以上の来場数でした。単体の建築の保存のイベントでは、建築関係者が大半のイメージでしたが、今回の選定は城下町との一体だったので一般の人たちも多いようでした。街の歴史と関連付けた建物保存の運動の可能性を可能性を感じました。