八武組 設計ブログ

ハッタケグミ:三重県四日市市の建設会社 設計メモです

旧神奈川県近代美術館 プレオープン

旧神奈川県近代美術館(1951年竣工・設計 坂倉準三)が鎌倉文華館(鶴岡ミュージアム)として再スタートします。

建築公開のための展覧会 新しい時代のはじまり とそれに合わせて坂倉建築研究所の所員向け説明会に行ってきました。正式開館は6月8日からです。

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所有が神奈川県から鶴岡八幡宮さんに変わり継続利用が決まりましたが、老朽化と耐震性の確保のための改修が2017年から行われ、ようやく完了しました。劣化と耐震性の低かった新館と付帯施設は今回なくなりました。

新館が無くなったのと護岸がキレイになったせいか、ずいぶんさっぱりした景色になった印象です。竣工当初の形に戻す方向で各所微変更(復元?)されています。

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入口は八幡宮側に変わりました。

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以前の入口。1階左側に以前のチケット売り場が残っています。
外壁は本来無塗装のセメント成型板でしたが、今回は耐候性に配慮し、白で塗装されました(素材感を大切にすることとの悩ましい選択があったようです)。ほかは元の色合いに戻したとのことで、私の知っている色合いよりも強めの色になっています。断熱性能を確保するよう断熱材を追加し、外壁は外側に出され建物はわずかに大きくなっているそうです。窓の仕様も真空層入りガラスで熱対策をしています。

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部分的に石貼りの壁に鋼板耐震壁が入れられています。左手が既存の石壁、右手奥が耐震要素を加えた新しい石材。

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あいにくの雨で軒裏にうつる水で揺らぐ光は見られせん。軒天は上階の断熱強化とより平滑さが維持できるように改装されています。

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床面は元と同じモルタル製。モルタルに亀裂が出ないよう石張りのように目地が入ってます。中庭部分は俊工時の玉石敷きと車椅子対応を合わせて、玉石洗い出し仕上げとなってます。

竣工時の姿を守ることを重視した劣化・耐震対応ですが、かなりの部分が新しいもの(基本同じ素材)に置き換わったため、長い時間を経たものがなくなったことがなにか物足りない感じがしました。この時代の建物に使われている建材が当時の工業製品であまり耐久性がないものが多いので、いたし方ないように思いますが、使っている石や木・鉄などの素材の減りなど新しいものには無いものが残る近代以前の建物への愛着が感じやすいのと、大きく違いがあるように感じました。細部的にはそんな感じはありますが、時代を超えた建築計画の魅力、建物とともに作ってきた文化活動が存続することはよかったと思います。

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