八武組 設計ブログ

ハッタケグミ:三重県四日市市の建設会社 設計メモです

みえ木造塾 第4回

第4回のみえ木造塾は山辺豊彦さんによる構造に関する講義です。

木造軸組みをつくる際、力の流れを追って考えることの大切さを図や倒壊した事例を示し、説明されました。

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熊本地震では、新耐震指針(1981年)後の家屋も20%ほど倒壊していますが、その大半は2000年(阪神淡路震災後の改正)以前のものという統計を示されています。2000年以降は耐震要素のバランスや層間変異角のさらなる指定があり、現状の規範に従えば倒壊の危険性は少ないとのことです。そうした規範以上に、守っておくべきポイントをご享受いただきました。また各地の予想地震動が地図上にあらわされた地震ハザードステーションマップを参照して耐震性能を考慮することも重要とのお話でした。

後半は載荷試験装置による梁の破断実験です。人工乾燥・天然乾燥によるたわみと強度のちがい、樹種による違いを実感するものでした。

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基本的には人工乾燥は繊維間の湿潤さを失わせ、カサカサで剥離に対して粘りが失われます。実験で破断した材の剥離面はすべすべと感じるくらい綺麗な面となっていました。強度的には乾燥材が最大耐力的には勝りますが、ネバリという面では、乾燥不十分のほうが勝ります。時間経過の後の収縮変化などの問題があり、採用できませんが乾燥していない木はネバリ強く、人を守るとも言えます。

樹種については、杉・米松・檜で比較しました。柔らかく強度が小さいと言われる杉はやはり弱い結果です。大断面でも比較的安価なためよく使われる米松は、当実験では耐力的には優れていました。ネバリは少ないので耐力を超えると一気に壊れます。

上質な和材として多くが期待していた檜は、今回の実験では、米松に及ばす、杉より若干良い程度で皆をがっかりさせました。

今回の実験で材の耐力に大きく影響したのは節の存在でした。載荷していく経過で節周りからの裂け目や節による材の分断がみえてきます。節の位置や量が材の材種以上に耐力を左右することがっきりわかりました。今回の載荷は通常の想定強度をはるかに超えているので、節の悪影響は実際の現場ではさほど心配はいらないのですが、特別大スパンになる部分では節の有り無し・位置を注意したほうが良いということになります。

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杉の人工乾燥材。キレイに木目に沿って割れてます

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左端が期待ハズレだった。樹齢100年ほどで自然木に近いものだそうです。見た目は上品で、生き節の様子もきれいでしたが、節の部分が欠点になりました。その右が米松、生育上、節も少ないです。木肌感は美しいとは言い堅いですが強かったです。

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