長野県上田市 上田市交流文化芸術センター+上田市立美術館 サントミューゼ
設計:柳澤孝彦 2015
上田市は駅をはさんでイオンとイトーヨーカドーのショッピングセンターが立地して駅前のにぎわいが保たれていると聞き、一度行ってみたいところでした。一般的な地方都市と比べると駅の人通りが多い印象です。駅近くにNHKの大河ドラマ「真田丸」の舞台である上田城址があり、観光らしき人が多いのもにぎわっている一因ですが。
建物は1000人の大ホールを主施設とする劇場と美術館、広い屋外広場からなっています。市のホール、美術館の建設はまれになったように思います。劇場・美術館は柳澤さんが最も得意とする施設なので、王道の設計者選択といえるでしょう。
わかりやすい施設配置と、各種材料に質感のあるディテールを加えた意匠は柳澤さんらしい丁寧な作り方です。
外装はコンクリートで、劇場側が現場打ちで美術館側がプレキャストコンクリートになってます。木目の転写された現場打ちのコンクリートのほうは柳澤さんらしい素材感があります。美術館側はコスト減の理由などあったのでしょうか?
劇場側の外壁は木目を転写する現場打ちコンクリート、黒いところは本物の木が貼ってあります
美術館側はプレキャストコンクリート(と思います)。
内部に連続する壁面は、台形に切られた木で質感。陰影があります。
設計の密度が濃い柳澤さんの以前の作品ではあまりなかったような、既成品、一般的な建築部材が使われているのが目につきます。凝った納まりがみせる上質感が弱くなっているのは残念なところです。(もう少しストイックな感じのプランニングが柳澤さんらしかったかなとも)。
東京都大田区の保養施設。体育館、宿泊施設、日帰り温泉などが斜面に沿った円弧状の形状に収まってます。アプローチ側は視線の抜けない鉄板、中庭を囲む側はほとんどがガラスでみんな内側を共有するイメージとなってます遮光要素のルーバーがありますが全面ガラスはちょっと使い辛そうです。ざっくり作られているような第一印象ですが、構造的にはいろいろ工夫されているようです。外壁に並ぶ柱は桁梁からオフセットした位置のあって、薄い屋根からの離れた関係にあります。
屋根は普通は廉価な折半屋根ですが、円弧状にするには手間がかかっているはずです。室内の天井は別の線状部材で作られているので、どのように屋根材貼ってあるか不明です。
構造は佐々木睦郎・花輪構造設計事務所です。場内にかかる橋もきれいです。
小諸駅前 懐古園のなかにある施設。島崎藤村が6年間小諸に在住していたことに由来した小さな記念館。現在の設計手法とは違い特異なことはなくまさに端正・シンプルな建物。水平線の構成に広がりを感じます。
一つ一つ、もののサイズをきちんと検討していくことの大切さを教しえているような建物です。