八武組 設計ブログ

ハッタケグミ:三重県四日市市の建設会社 設計メモです

みえ木造塾

みえ木造塾第1回に参加しました。

木造の研究のために三重県の建築家がはじめられた有志勉強会です。建築家だけでなく、関連業種の方や学生さんなど、木造に興味のある方々が集まっています。

今年度第一回となる講義は、東京大学名誉教授の内田祥哉先生が講師を務められました。

講義内容は先生の長年の経験からのお話だけあって、説得力があり、受講者を飽きさせない講義の上手さがありました。91歳になられたそうですが、たいへんお元気で、この直前には、東北で刺激的なお話をされて、話題になっているようです。

テーマは「和小屋のこれまでとこれから」いうもので、建築学としては軽視されてきている和小屋の成り立ちとその効果、将来性についてのお話でした。和小屋とは日本の一般住宅で用いられる屋根を作る工法で、壁最上部の梁の上に屋根の形を自由につくる方法です。先生の調査でも、欧州でこの和小屋の形式は見当たらないとのことで、強く大量の雨がふる日本独自のもののようです。始まりは桂離宮あたりからで、増築をする際に便利ということで採用が増えていったようです。現代求められている増築・改築を行い、住宅を永く使っていくうえで、和小屋の仕組みは今後も役立つとの指標を示されました。

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特に印象に残ったのは、畳のおかげで日本人は、空間イメージを共有しているとのお話です。そのため居住者と大工さんの間で容易に改築の話ができ、欧州より数段、居住者の思う改修が進んだ(そこには和小屋の自由度が役立つ)ということです。4畳半、6畳、8畳という感じで空間の大きさを両者が把握し合えるのです。このことを思うと他国に比べ建築家の存在感がないのも、畳のせいではないかと類推してしまいます。

講義の会場には、三重大学のレーモンドホールでした。

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日本の建築家に大きな影響を及ぼしたアントニン・レーモンドの現存する貴重な建物の1つです。レーモンドは大正8年(1919年)に帝国ホテルの設計のため、フランク・ロイド・ライトに同行して来日。日本の建物の自然にそうつくりに感銘し、日本での活動を行いました。このレーモンドホールは、戦後再来日しから数多くつられた丸太をそのまま表現建物の初期の作品です。ほかの建物に比べ、使用している材の太さが大きく、他の建物の繊細なセンスとは少し違いがあります。内田先生の見立てでは、他の作品以上にプリミティブで日本の大工さんの技能を頼りにしたところがあって、大工さんからは相当苦言を言われて、それ以降、手間がかからないように努めたのはないかと。

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ホールは今年から見学自由とり、平日昼間は予約なくてもみられるそうです。場所は三重大学南門付近です。

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