「日本のチロル」としてメディアに取り上げられている飯田市上村下栗の集落。
ヨーロッパアルプスのような急斜面のなかに家や畑があります。平均斜度30度、最大斜度38度とのことでスキー場の上級者コースほどの急勾配です。
勾配のなかの家は、土地と一体になった構成、そこから見える景色が良さそうなこと、その危うさも、と建築的な魅力一杯です。
つづら折の道の間に家は表と裏に1階分の高さを違えて接道する特異な敷地条件です。
設計のやりがいが高まります(仕事の依頼が来ることはないと思いますが)。
ヨーロッパとの違いは家々を構成する素材の多様さとスキー場のリフトのように並ぶ電柱の存在です。アジアの特徴をもつ風景なので「日本のチロル」という西洋に憧れるような例えより、独自の表現を考えたいところです。
集落一望できる展望台を住民協力で作られたそうで、いかにも人力で作った簡易なステージで環境にもやさしくていい感じです。
そこから見た風景。
集落の向こう側もその手前側も深い谷筋の森林が続きます(集落のかなり下に渓流といえるような川が流れています)。集落には断片的に整備された頼りない国道から10kmほどの山道を通らないと来れないので、全くの山の中に忽然とあります。
この集落を存続するために、他から人が来てもらえるよう集落の上の少し平らになったところを開いて30台ほどの駐車場とミニ道の駅のような施設を運営しています。急勾配の家々の特質からすると、どこにでもあるような施設感でイマイチそぐわない感じがあります。ここのような独自で素朴な生活を存続させる、より自然な持続性は無いものなのでしょうか。なぜこんなところに住み始めたのかも不明のようですが。