八武組 設計ブログ

ハッタケグミ:三重県四日市市の建設会社 設計メモです

地方の建築@尾道

地方都市の街活性化の事例として、気になっていた尾道駅とOnomichi U2を見てきました。尾道は坂と水道(海辺)の街、しまなみ街道などの景観と映画の舞台として知名度があり一般的な地方都市より、かなり好条件な街といえます。かなり前に安藤忠雄さんの美術館が作られていて、近年は中村拓志さんのホテルやマウントフジアーキテクトの社員寮(こちらは観光施設ではありまんが)、世界的に注目されているインドの建築家スタジオ・ムンバイの宿泊施設など、地方としては有名建築がいくつもある特異な場所となっています。

JR尾道駅アトリエ・ワンの設計(デザイン監修)で2019年3月に開業です。列車が改札外からも良く見えるつくり・ホームと駅前広場が連続する形態は現在の駅建築には外せない要件です。

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2階に人を促すための工夫と思われる階段部の意匠。ちょっと力強すぎる感はありますが、きちんと作られています。2階は都会的なレストランと市民の活動のスペース、ホステルもあるようです。地上と視覚的なつながりも弱く、わざわざ上がって来ないといけないのでホステル利用者以外には認知度は少なそうでした。

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外観からは上記の施設があるような気配が感じられにくいので少し残念です。

 

Onomichi U2は今人気の高い谷尻誠+吉田愛さん(サポーズ デザイン オフィス)の設計で2014年に竣工です。

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水道に面して戦時中に建てられた海運倉庫「県営上屋 (うわや) 2号」を改造して物販・飲食と宿泊施設が入っています。しまなみ街道の基点として自転車推しの街づくりに関連し、世界的な自転車メーカーショップとサイクリストをターゲットとした宿泊機能で、コンセプトも明確で他の街の施設との差別化もはっきり打ち出されていて、先進事例としての全国から注目を得ています。

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サイクリスト向け宿泊施設。既存躯体の中に2層の部屋。各室の入口前まで自転車を持っていける ↓

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既存の倉庫の躯体の中に、こだわった素材をつかった空間つくりで安っぽさはありません。訪れる人たちが自分がセンスアップしたような良い気持ちになれるような雰囲気があります。地方では貴重な存在です。自分の生活感を引き上げるような施設の存在は、より豊かな生活への動機づけに大き効果があるように思えます。

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尾道は造船の町でもあります。U2の向かいには浮きドッグがありました。

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大きな建物が浮んでるようで不思議な景色です。ほぼ完成している貨物船が入ってしました。

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山が迫っている地形のため、造船所は谷筋にあります。建物が作りにくい急な勾配なので緑豊かです。その緑の山の隙間からクレーンが見える景色はジブリ作品の中ようです。

単に観光産業だけでなく、造船などの産業が見られることも魅力のある街の条件だと思います

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