八武組 設計ブログ

ハッタケグミ:三重県四日市市の建設会社 設計メモです

武者小路実篤記念館

20年以上のお付き合いとなる調布市立武者小路記念館さんに、小改装のご相談を受けて伺いました。

記念館の建物は1985年の竣工です。まだ図面は手書きのころで、設計者は細かなディテールを競っていた時代でした。既製品を使うことは少なく、ほとんどの部分がこの建物だけにつくられたものです。素材感を重視して手を加え、丁寧に空間を作っていく良いお手本の建物だと思います。小さい建物ですが若い設計士さんにぜひ訪れてもらいたいと思うものの一つです。

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単純な形ながら、実篤先生の大らかな印象につながるムクリのある屋根が特徴です。

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エントランス部はスチールのサッシュとコンクリート。打ち放しと小タタキ仕上げで表された実篤先生自筆の「日々是好日」が程よい意匠のエントランス壁面を作っています。

記念館のある場所は、水のあるところに住みたいと池のあったこの地を選ばれ、晩年の20年間を過ごされました。調布市の公園となっている敷地には、アトリエとしても使われた住宅が残っています。昭和36年築の木造住宅で基本和風のプロポーションですが、暗くなる北側斜面側の玄関にはトップライト、池を望む側には大きな開口に屋根付のテラスがあったりする現代的な要素もあるつくりです。土日は内に入れます。

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この旧邸については東日本震災前に耐震改修をさせていただきました。その甲斐あって大きな揺れにも、遜色なく無事に建っています。従来の開放感や実篤先生の活動の跡が残る土壁を残す工夫が報われた思いがあります

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