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八武組 設計ブログ

ハッタケグミ:三重県四日市市の建設会社 設計メモです

旧朝日町役場 耐震補強工事

三重郡朝日町にある旧朝日町役場(現朝日町資料館)の耐震補強工事現場説明会に行ってきました。大正5年(1916年)に建てられた木造2階建て延べ床面積234.1m2の建物です。1階は事務関係諸室、2階に議事堂を設けた地方役所建物の特徴をよく留めているとして平成12年に国の登録有形文化財となっています。

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耐震工事の内容は、屋根の重さを減らすために土ぶきの瓦屋根を釘で固定する乾式の軽量瓦への葺き替え。水平剛性を持たせるため屋根面と2階床面に合板を設置。腐食や虫食いでなくなっている木造構造体の置換。地震の横力に対抗する耐震壁の設置とそれを支えるためのコンクリート基礎の設置です。

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1階の事務スペースは36帖の無柱空間で、ほとんどが窓や通路で耐震要素となるか¥べがなく、その分開放的で、気持ちよさそうです。4間半(8.2m)の梁を受けているのは両端1本の独立した形の普通の柱で少し頼りない感じです。

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2階はこの事務スペースの真上に半分の広さの議事堂が配置されています。その上はトラス梁の屋根になっているそうです。大きな空間の上に同じような大人数が乗る部屋となっているのも、構造的には無理をしているように思います。

今回の耐震工事で建物の4隅には耐震壁が設置されます。従来の土壁や窓の内側に壁をつくります。既存のものはそのまま残し、将来壁を外せば、昔のものが見られるようにするとのことです。

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基礎挿入工事の記録写真

土台については、従来ののべ石に、ただ乗っている状態から、現在の耐震基準に合うよう基礎を作りそれに固定します。部分部分で建物を支持し、その下を掘ってコンクリートの基礎を作っていったそうで、かなり手間のかかる工事になっています。

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工事による床解体によって、建物が改造されている痕跡が出てきました。玄関部増築前の事務空間の土間です。コンクリートではなく三和土で作られています。工事に支障ない部分はこのまま床下に残置です。

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新旧の瓦。古いの

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新しいの

瓦の寿命の目安は100年くらいと言われます。今回大屋根の瓦は耐震性の向上のため全面新しくなりますが、古い瓦で損傷のないものは下屋で再利用されるそうです。新しい瓦、風合いが劣る気がします。

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この建物の普通じゃない部分。2階床の1方の床梁がありません。イタリアの建物みたいな構造で地震に弱く、なにより建物をつくるとき、柱の位置が固定できず非常に建てにくかったと思います。材料を節約する必要があったのでしょうか?

本来、この建物は法隆寺のような古い建物と同じように土台が地面に固定されず、地震の際は、建物形を壊さずにズレ動くことで崩壊を免れるしくみなのですが(濃尾地震ののときのかなりの揺れにも耐えています)、現在の耐震診断の基準の数値化する必要があり、固定して揺れに反発する構造に変更となりました。大きな弱点であった屋根荷重をかなり低減できたので、本来のしくみでも倒壊する可能性はより少なくなったと思います。せっかくの文化財指定なら、現行法規を越えて対地震対策も保存すべきところかと思います。

旧役場のすぐ近くに朝日町小学校があります。昭和30年代同じような円形校舎が百校以上作られたようですが、現存しているはわずかなようです。近年児童保護のため、中を見ることは容易にできません。子供のころに一度中に入った記憶がかすかにあります。

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