八武組 設計ブログ

ハッタケグミ:三重県四日市市の建設会社 設計メモです

伊賀市役所

20世紀の価値ある建築物を保存する活動Docomomoにも選定されている伊賀市役所(旧上野市役所)庁舎(1964年坂倉準三設計)が用途変更して再利用か、取壊しかで論争が続いています。

市役所の再利用を表明し当選した市長と取り壊して新しい建物を要望する議員グループの間で、ずいぶん長い間、決着がつかないようです。

地元建築家の方々は、心配される耐震性も確保できるとの技術的な裏付けもつけて、市役所を図書館と郷土文化を展示する施設として再生の提案を行っています。それでも取壊し派は妥協しないようです。

この地元の方々と坂倉建築研究所(旧坂倉準三事務所)とは、なんら関係はありません。保存運動の働き掛けも坂事務所は行っていないのに、地元に愛され、熱心な保存運動を行っていただけるのは、その設計者にとってこの上ない幸せといえます。

建築としての機能を全く果たさず、彫刻のように保存されるべきものではないですが、多くの人たちに使ってもらえる施設として存続できるのであれば、ぜひ残してほしいと思います。

上野市役所は今残っている南庁舎のほかに、北庁舎と中央公民館が一体となる建築群の構成だったのですがその2つは取り壊されて駐車場になってしまってます。残念。市役所の隣りの小学校の体育館も坂倉作品です、いつまで残してもらえるか心配です。

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建物はコンクリートのフレームと少し奥に入ったガラスの壁の構成です。外壁に壁が少なく内からは開放的な印象、外観からはコンクリートの躯体が印象つける彫の深いファサードとなっています。

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永い間に育った木々が建物を囲い、内からの視界も外からの見えもよりよくなったと思います。フレーム内半外部空間は木々の影が落ち気持ちのよい空間になっています。

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室内をつくるガラスのカーテンウォールは、現代の感覚でもセンス良く感じます。このような鉄を使った質感のあるシャープで力強い作りは、安価で性能の保持ができるアルミ材が優位なってしまって、今はなかなか採用されません。作れる技術者も減ってきていると思います。

このようなサッシュの作り方は坂倉大阪事務所が得意としているところなので、伊賀市庁舎は大阪で主に設計したのはないかと思いました(?)

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