八武組 設計ブログ

ハッタケグミ:三重県四日市市の建設会社 設計メモです

村野藤吾模型展

目黒区美術館の「村野藤吾の建築」模型が語る豊饒な世界 に行ってきました。

京都工繊大の学生さんたちがつくった計画案を含む80点の模型を主体とした展覧会です。

模型を作った学生さんにとっては、貴重な村野先生の図面を立体にしていけるよう読み解くという、非常に意義深い作業だったと思います。村野先生の建物は、当時の職人たちの技術で、十分な手間をかけて作り上げていく手作りな建築というようなものだと思います。そのため、曲線が多かったり、繊細なパーツが多く、模型をつくるのもかなりの労力が必要です。展示されているものの完成度はかなり高く、相当な努力と根気が感じられ、80点もあるとかなり見ごたえがあります。

村野建築の魅力は、実物の細かな作り、素材の選択の妙などによる身近で感じる質感・雰囲気にあり、一般に紹介されている資料は、現物の写真や当時描かれた設計図(特に詳細図が)多いので全体の様子が一目にわかるものは少ないのです。今回の模型では、現在の日本建築で表現されるシンプル・ニュートラルな建築ではなく、個性の生きた自由展開や気の利いた意匠が見て取れて、夢のある建築の楽しさを再認識しました。

経済性が重視され、手間のかかった建築が少なくなってきたように思います。この模型展をきっかけに村野先生の実物の建物を見る人が多くなり(模型の注釈にあるようにどんどん解体されつつあります)、良い建物の価値を共感することが広まればよいと思います。

目黒区は村野建築の代表作の一つの千代田生命本社ビルを買い取って区役所にしています。何度か仕事上の折衝や申請で訪れていますが、良い建物を保存してもらって本当に良かったと感じます。

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目黒区美術館だけあって展示の先頭が旧千代田生命本社ビル(目黒区役所)です。

目黒区美術館は、大きな道路に面さない目黒川沿いにあって、すぐ脇は区民プール(子供用プールが近接)した目立たない立地で田舎者には特異な印象だと思います(私だけかもしれませんが)。結構メジャーな展覧会を企画しているのでより一層そう感じます。

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