八武組 設計ブログ

ハッタケグミ:三重県四日市市の建設会社 設計メモです

みえの気候風土適応住宅 勉強会

みえの気候風土適応住宅 勉強会に参加しました

この勉強会は、2020年から義務付けとなる住宅の省エネルギー規制によって、土壁・真壁造の伝統的な日本家屋が規制に合わず建てられなくなることを危惧して、適応緩和の道筋を探るものです。建築3団体の建築士協会・建築事務所協会・建築家協会で、適応緩和の規定を作成し、監督する特定行政庁に提案するために行っていて、行政を代表して三重県さんにも参加いただいています。

義務付けられる規制は一般家庭でも環境に配慮して省エネルギーに貢献するように、住宅の断熱性の向上や使用エネルギーの低減を目的とするものです。伝統的な日本家屋は土壁や屋根下地の板が見えるつくりですが、そういったものは断熱性能が不足するし、計算自体もやりにくいものです。全住宅に規制がかかると伝統的な建物の新築はできなくなり、そういったものをつくる技術も絶えてしまうので、国土交通省でも緩和をそれぞれの行政庁で取り決めるよう指針を出しています。この動きは日本各所で始まっています。それぞれの気候風土にあった住宅を各所独自で決めることになります。

それぞれの気候風土に適応といっても日本の大半はよく似た温暖な気候なので、その気候に即した特殊性はなかなか提示できなそうです。そのため建物自体の作り方が、その土地で長く作られてきたやり方であることが決め手となりそうです。協議が進んでいる他県の例では、地元木材の利用とか、職人の手による木材加工、金物に頼らない組み立て、壁が土壁などの条件のいくつかを満足すると適応となるものがあります。

伝統的日本家屋を残していく方策としては、そのような規定でないとかなりハードルが高くなってしまうでしょう。その規定も一般に販売されているハウスメーカーの家に比べるとかなり高価になるのですが。

気候適応で省エネ効果もあるという本来の意味合いからすると、開放的で過ごし易く空調エネルギーも必要なくて、エネルギー低減という住宅も、認められるべきと思いますが、そちらのほうは一律の規定は作りにくく、許容されるかは今のところ不明解です。

住宅を作る側が、省エネの証明を行い、それを行政が容易に認証する枠組みをつくれるかがもう一つの勉強会の課題と考えています

柱だけの建物

ずいぶん久しぶりに、長床に行きました。熊野神社の拝殿で、木造の柱だけの建物としては最大だと思います。神社の一部ですが気軽に内に(?)入れます。

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ここにあがってくる人たちを見ていると、壁が無いことの清清しさは普段建物にあまり関心がない人でも感じられるように見えます。

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結構屋根はボリュームがあって作りもしっかりしていますが、建物全体としては軽やかな印象があります。

ほかにも三島大社の舞殿も壁がなく、重い屋根部分に浮遊感があります

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伊勢神宮とかにも(写真は滝原宮)

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最新の建物は耐震性のため壁を最小限入れていますが、清清しさは感じられます

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とか

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板倉の復興住宅

東日本震災の木造仮設住宅を県営住宅に転用した城北団地。8月に視察に行ったいわき市仮設住宅と同じ板倉の家です。板倉の家は、木造の柱と柱の間に3cmの杉板を落としこんで壁を作るしくみで、その板が断熱材の役割をもった内装材となり、木質イメージのたっぷりのインテリアを作ります。また耐震性もこの板で確保する木の性質を生かしきったつくりです。

いわき市のものと同じ安藤邦廣さんの設計で、いわきでは解体途中でしたが、ここは先行して常設の復興住宅として転用が完了されています。

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仮設の違いは基礎部分か仮設では木杭、常設はコンクリート基礎の違いのみです。間取りは仮設時の2軒分を1戸として県営住宅の広さの基準を満たしています。住棟配置については各建物の接道条件を守るため、同じ土地ですが配置換えをし、一旦解体保管後、コンクリート基礎を作って再築しています。

木材の再利用率は木杭からのシロアリ被害のため、土台は新材、間取り変更と入口建具のサイズ適応のため、60%程度だそうです。使用材の半分を占める板倉の板は90%の再利用率です。今回の再生費用は新築の場合と変わらないくらい掛かっているようですが

材の細かな傷を良しとすれば80%くらいの費用と見込めるそうです。また廃材も少量となるので、コスト面以外のメリットもあるとのこと。民間に払い下げなどで事務所などへの転用事例では70%くらいのコストに抑えられた例もあるようです。

福島の仮設住宅の約5800戸が木造で作られ、従来のプレハブ住宅より快適な住み心地、地元材の利用、地元職人の労働活用と大きな利点が実証されました。

f:id:hatt88:20181104131732j:plainここも一般的な新建材の木造住宅(2階建て)と同じ団地内で並設されてます

四日市萬古作家協会展

今年行われている 沼波弄山翁 生誕300年記念のイベント の一つ、四日市萬古作家協会展に行っていきました。会場は四日市旧港に近い伝七邸で2週間のみの開催です。

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各作家の作品を見るだけでなく、作家さんの器を使った食事やお茶をいただくなど、体感的なイベントとなっています。

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お昼のお膳。それぞれの作風が楽しめます

f:id:hatt88:20181026002031j:plain抹茶もそれぞれ違う作家さん器でいただけます。萬古焼きとしては意外な印象の金の器。これに当たるとラッキー感があります。

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作品の展示も明治初期に作られた伝七邸のしっかりした和の空間に展示され、博物館のガラスケースに入った展示とは違った周辺の雰囲気とともに、その魅力を感じられるものです。

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窯業試験場で学んでいる作家の卵さんたちの作品展示もありました

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 練りこみそのままを意匠としたものや銀引き風の作品。何でもよしとする萬古焼の自由さが、良く活かされているように感じました。今風のシンプル+自然感のある雰囲気で若い人の作品を集めて販売するお店が常設されると発信力が増すように思われます。

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伝七邸の2階からは四日市港が望めます。市内でこんな風景が見られるとは思いもよりませんでした。

 

 

世代を表す2つの建物

群馬県にある2つの建物を見てきました。群馬県立館林美術館と太田市美術館・図書館です。

群馬県立館林美術館は、設計は高橋 靗一さん、2000年竣工です。芸術性・完成度の高い建築を対象とした村野藤吾賞も受賞しています。特徴のない平坦な水耕地の中につくられた施設ですが、建築の力で日本とは思えないような風景作っています。

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完成した美しい建築のフォルムを人々に印象づけます。何もかもがきちんとしています。

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高橋さんの建物は緻密で厳しい完成度への思いが感じられます。他にも何作か見ていますがその中でもこの建物は、最も高橋さんの頑固さが伝わり、いいものをつくるにはこのくらい妥協をなくつくらないとダメといわれているような圧力を感じます。

高橋さんと同世代の林昌二さん、宮本忠長さん、阪田誠造さん、池原義郎先生といった方々は厳しい建築を教えていただいた大先生たちです。

太田市美術館・図書館は、設計は平田晃久さん、2017年竣工です。地表から屋上に、らせん状に連なる動線にカフェ・図書館・美術館が絡まっているという建物です。

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外観も、動線がそのまま見える、ぐにゃぐにゃで建物然としてません。内部の仕上げも、塗装のみで鉄材形状がそのまま見えるものです。動線をつくる床の隙間から次の動線(空間)が垣間見えて、思いがけないシーンが現れる面白い体験ができます。

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↑美術館の入り口の柵

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本当に本好きの方には受けないかもしれませんが楽しく、気持ちよい感があります

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↑屋上テラスに至る

設計者的には皆が面白く感じる空間を極めていく努力をしているはずですが、館林美術館と比べると行き当たりばったり感があります。平田さんたち40歳台より若い人たちの従来の建物らしい建物を作らないスタイルにも、大いに魅力を感じます。

 

 

偉大な先輩建築家に学ぶ 講演会

日本建築家協会の建築家大会2018東京 で開催された講演会 

明治大学アカデミーコモンにて

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NPO建築文化継承機構がJIA・金沢工業大学と進めている建築の思想文化を継承していく活動です。今回5回目の講演会で、開催された場所・明治大学に因んだ方々についての講演となっていました。

建築史家の神代雄一郎 講師 青井哲人さん。

神代さんは1960年代にアメリカで、デザイン・サーベイを行い、アメリカは少数民族の小コミュニティーの文化のうえに成り立っているのを感じ、日本文化の原型は村部にあるのではないかと、農村、漁村の調査を行ったようです。

そのころ、日本の町並み・文化を巨大建築が破壊していくという考えを主張していたそうで、それから50年後の今と同じ危惧を先見的に感じられていた立派な方です。日建設計、日本設計といった大手組織事務所の設計者を批判する立場を表明したいましたが、批判相手に強い反論で返されたり、学生など若い世代からの賛同もなく、表に出なくなってしまったそうです。

 

建築家 堀口捨巳 講師 岩橋幸治さん。

堀口捨巳さんが亡くなったあと名古屋にある八勝館の維持改修を続けていらっしゃいます。堀口さんの意匠を壊すことなく耐震化や空調環境の整備を付加していっています。堀口さんの意匠手法にも当然詳しく、マニアックな講演でした。

 

建築家 阪田誠造 講師 山岡嘉彌さん

阪田さんは前職で雇っていただいたときの代表で、山岡さんは入社当時の先輩です。

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講演内容は阪田さんの作品と人柄についてで、私としては懐かしい思いで聴講してました。阪田さんと山岡さんの仲の良い関係が十分感じられるものでした。

日経アーキテクチャに掲載されていた事務所内の打ち合わせ風景の写真を比べ、所員が対等な関係で打ち合わせをしていた阪田さんに対し、黒川紀章さんの事務所では黒川さんを恐れているように見えるとコメントしたことについて、聴講していた当時黒川事務所OBの方が、黒川さんとは皆、仲良くしていたと反論したことは、普通の講演会では見られない、近しい同業者のイベントの特質感を感じる出来事でした。

 

六本木のマクドナルド

先日、名古屋栄のマクドナルドがセンスいい感じだったので、東京に負けているかと立ち寄ってみました。

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六本木ヒルズの傍らにある店舗。ここも一般的な店舗用とは異なりデザインに力が入っています。場所柄、当然ファミリー向けではありません。

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名古屋のに比べると、アーティスティックな要素を多くいれて、より刺激的な印象です。天井高さもあり天井意匠も頑張ってます。席数を多くとる分、名古屋のほうがゆったりした印象があります。余白がない分、清潔感の印象も名古屋のほうがよいです。

www.hattake.co.jp