八武組 設計ブログ

ハッタケグミ:三重県四日市市の建設会社 設計メモです

インターンシップ

今年も高校生の職業研修に協力しました。例年通り建築学科2年生の生徒さんです。

実際の設計の作業に関わってもらい、いろいろなアイデアを盛り込んだ建物の魅力を実感してもらえれば、設計者とつくる住宅の普及に役立つのではないかと積極的に受け入れています

今回の研修は竣工真近の住宅の現場確認への同行してもらい、その住宅の特徴が、その敷地条件や住まい手の志向にどのように対応しているかを、空間を体感しながら説明しました。

その後、厚紙を使って検討模型を作ってもらい、比較的簡単に立体ができることや、簡易な模型でもつくると楽しくなることを感じてもらえるようにしました。

まだ2年生なので模型を作ることは多くないようでしたが、結構きれいに作ってもらえました。

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全く知らないところでの2日間の研修でかなり緊張していたようですが、なにか楽しいところを感じてもらえると良いです

はまぐりプラザ 猫飛び丁

桑名市内に内藤廣さん設計の建物があると聞いて見て来ました。

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2012年竣工したはまぐりプラザです。漁港を守る堰を造るにあたり、そこにあった漁協の施設を含む建物として作られたようです。地盤がよくないので軽い鉄骨造となったとのこと。

周辺民家に合わせた屋根と分節したバリューム感で構成されてます。3階建てで少しシンボリックなものも意識されたかもしれません。建物4周にデッキが設けられ、揖斐・長良川と船ダマリ・漁村集落が一望できます。

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外壁は板張り、ちょっと汚れた感がありますが、自然素材を使うことの風合い・時間経過の変化を良しとする表現です。ただ軒裏はあまり気をつかわなかったのか、物足りない仕上げです。

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比較的普通ぽい形態の建物ですが、設備機器が目立たないよう、建物内3階に空調屋外機が入れられているのは、結構贅沢なつくりです。

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はまぐりプラザの脇の街区は「猫飛び丁」と呼ばれる特異な街になっています。猫が飛んで渡れるほどの2mほどの路地の街です。

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土地の限られた漁村などによく見られる密度の高い集落です。建築に関わる私たちには、なぜか魅力的に見える街です。普通の住宅地に住む人にはわからない、近隣との緊密な住み方の良いところがきっとあるのではないかと思ってます。

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近隣の結束が一つのメリットと思いますが、そんな街でも不審者がでるのが残念。

なぜか道の正面に家の玄関がある家が多いように思えます。玄関が少し魅せる形で作られているようで、通りのアイストップとなり街を飾っているようにも思えます。

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船ダマリの先にはお堀がつながっていますが、今は埋められています。水があれば魅力ある空間になりそうなのですが。

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木の塗装

日本建築家協会の企画した木部塗装の勉強会がありました

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講師は自然塗料のオスモ&エーデルの大黒さんです。オスモ社の製品紹介だけでなく、よく使われている他者の製品の特徴も合わせて、説明いただく内容で、各塗料について基本的な知識を整理できる良い機会となりました

国土交通省の塗装略号WP・UC・ST・STUCなどの示す仕様を具体的な製品名とそれぞれの特性をあげての説明で塗料選定の際の適切な判断材料が得られました

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塗装時の下地処理や樹種の違いに対する注意点などを実物塗り見本を持って説明いただき、実感をもって木塗装の知識を得ることができました

もちろん、オスモさんの自然塗料の成分特性も説明していただき、優れているところが納得できました

INAX TILE PREVIEW2018

いつもお世話になっているLIXIL担当者さんからのお知らせにのってLIXILさんの今年度タイル展示会にいってきました

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今年はタイルブランドをINAXとしたためか、これまでのINAXタイルの歴史を見せる展示がありました。フランクロイド・ライトの作った帝国ホテルのテラコッタも展示されてました。LIXILさんで保管しているピースだそうです。創業当初のタイル見本帳のタイルはレトロな感じのやさしい色合いでした。タイルの色は変わらないので製作当時の色そのままとのことで、現在は製作環境が異なるので同じ色合いは出せないそうです。バブルの頃に流行ったという原色鮮やかなタイルは、色出しにコストが掛かるのでこれも現在は作っていないそうです。言われてみるとポストモダンの建物に多く見かけたような気がします。

最新タイルの展示では表面にデジタルプリントして天然石に近い表情のものが多いです。小口は基材の土色なので建物に使うときに端部の処理に困ります。以前は色のある土を練りこんだものが正統なタイルとして多くラインナップされていましたが、これもコストが掛かるので少なくなってきています。設計士的な観点では、何かに似せたものよりタイルにしかない表情が好まれると思うのですが、一般市場はそうではないようです。

消臭、調湿や防滑、防汚など機能面が多くプレゼンテーションされています。意匠性は輸入ものに任せる、機能性でのメリットでアピールしたほうがクライアント受けがよいということなのですが、意匠設計に関わるもとしてはちょっと残念と感じます。

この展示会のもう一つの要素は、試作タイルの展示です。来場者に評価してもらい製品化につなげるしくみになっています。タイル製作者のこだわり篭もったタイルが並びます。展示担当の方のお話を伺うとタイルマニア的な知識が垣間見れて、とても興味深く見られます。七宝風のガラス・金属表情、正形形状でない風合いのあるもの、目地材をなくすタイル形状、ごく薄のタイルなど興味深いものがいろいろありました。

コストの掛かるタイルは最近の建物の外壁には使われることは少なくなってきています。以前は石が高く、タイルは安い材用だったのですが、今は安い石が入ってきてしまったので逆転してしまいました。欧米では昔からタイルは高級品だったので、タイル貼りの建物は貴重とされえてます。そんな流れでLIXILさんも室内使用のものが多くなってきているように思えます。一番多く使われえる床タイルは、輸入品が大半です。ヨーロッパの土のほうが良くて大きな板や複雑な形状もやりやすいそうです。タイル技術は日本が優位と思っていたのですが、材料のハンディがあると聞くと、なかなか優位に立つのは難しいなと。

 

 

近代産業遺産

九州福岡の近代産業遺産を見てきました

糟屋郡志免町 旧志免鉱業所竪坑櫓

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昭和18年(1943年)竣工。高さ47.6m、長辺15.3m、短辺12.3m 

製作者 第四海軍燃料廠(設計者 猪俣昇)昭和39年に炭鉱が閉山となり、平成21年(2009年)に国指定重要文化財となっています。鉱員を石炭層まで下ろしたり、石炭を地上に引き上げたりするエレベータのための建造物。深さ430mまでの長さだそうです。現存する同型の施設は世界でもベルギーのブレニー、中国の撫順と志免のみとのこと。

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周辺はグラウンドや福祉施設になっていますが、施設至近部は倒壊の恐れのためか入れないようにフェンスで囲まれています。志免町の中心に近い岡地に立地し福岡市内からも見えるので、町のシンボルとして見れます。

北九州市 高田第一高炉史跡広場

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明治34年(1901年)日本初の本格的製鉄所として建設された「官営製鐵所」の溶鉱炉。昭和37年(1962年)に現在の形になり、昭和47年(1972年)まで使われていたようです。平成8年(1996年)に市指定文化財に指定。高炉一帯を広場として整備しています。町外れの感じですぐ脇を高速道路が通るようなところで、日常的に住民が訪れることがなさそうでちょっと寂しい感じです

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一般的な建物と機能が異なるので、形状も特異で造形的にはとても魅力的です。また廃墟的なものが持つある種の不完全感、時間流れを感じるものは、建築家の多くが魅力を感じるものだと思います。ちょっと残念なのは、内部に入れないこともあって、全体としての彫刻的な存在感があるものの近代遺産としての意味合いが体感しにくいところです。訪れる人が少ないのも、ただ形態が見れるだけということによると思います。ドイツやオランダなどは産業資産をリノベーションしたり、有効な観光施設にしているようです。

高田高炉の隣には、本物のスペースシャトルを中心要素としたテーマパークがありましたが、採算合わず閉鎖されて、解体が始まっています。このテーマパークは学生のころ、バイト先で設計していたものなのでちょっと残念です。

スペースシャトルだけでも残ってくれれば廃墟が並ぶ珍しい景色になるのですが。

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竣工 披露会

先日竣工した結婚式場アクアリュクス様の披露会に招いていただきました。

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開催前で写真がイマイチです

挙式もイメージを時間できるように、模擬結婚式まで催されお花やキャンドルでより雰囲気のある空間になっていました。

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パーティーのお料理は、建設打ち合わせに参加されていた水谷シェフによるもので、とても美味しいものでした。作り手の人柄を知っていると料理に一味足されるように思えます

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下北沢の家 見学

下北沢の住宅地内にできた住宅を見せていただきました。設計は井上洋介さんです。井上さんとは前職の同僚でこれまでも数軒見せてもらっています。

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コンクリートと鉄、木の素材感を十分に活かしたとても魅力的な家でした。それぞれの材料がラフで力強く使われて、ちょっとワイルドな雰囲気の井上さんが反映されたものです。

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コンクリートはこのところ井上さんが取り入れていた型枠からコンクリートを漏れ出させてテクスチャーを強める表現です。トップライトから落ちる日光によってできる影が壁面を飾ります 。

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コンクリートの壁、鉄骨の大梁、木の小梁へ強い印象の構成物が徐々に和らげられて、くつろぐスペースにに対応しているように思えます。

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吹抜をリビング使うことが多いのですが、この家はリビングには吹抜は無く、庭の空への抜けと階段部の上下の抜け感を両側に持つことで閉塞感をなくしています。

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素材表現が特殊で設計者の好みが強くなりそうな建物ですが、そんな個性を押し付ける印象はなく、自然と出来上がったような気持ちよさのあるものでした。

荒々しいコンクリートの吹抜は、台湾の古い街にあった雨が漏っていても平気なラフな感じがうらやましいと感じた古いお茶屋さんと似ているところがありました。

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 ↑台湾九フンの斜面に直接建てられていたお茶屋さん。木製の階段向こうは斜面そのもの石壁、上はトップライトで雨が漏ってましたがその下には金魚の泳ぐ池が作ってあり、したたかなフォローがありました

 

www.hattake.co.jp