八武組 設計ブログ

ハッタケグミ:三重県四日市市の建設会社 設計メモです

伊賀市 20世紀遺産選定記念シンポジウム

伊賀上野城下町が日本イコモスにより20世紀遺産に選定されたのを記念してシンポジウムが伊賀市ハイトピア伊賀で行われました。

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イコモス(国際記念物遺跡会議・International Council on Monuments Sites)は1965年に設立された国際的な非政府組織で文化遺産保護・保存の諮問機関としてユネスコ世界遺産の判定に関わっています。

前半は日本イコモスの事務局長 矢野和之さんによる基調講演です。

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今回選定された日本の20世紀遺産 21選の紹介とその選定理由の説明でした。20世紀遺産選定基準は、世界遺産選定と同様に世界基準の評価となっているそうです。

20世紀遺産選定の要点は

・20世紀に始めて現れたもの

・19世紀からあり、20世紀に発展したもの

・歴史的事件に関わったもの

・伝統と20世紀に現れたもの対比、調和があるもの

という観点で歴史上に残すべきものを選定しています。一般的に近代建築の価値を意識しない傾向にあるので、歴史の中の欠落を心配した対策です。

原爆ドームや国立代々木体育館も選定されていますが、建物単体の選定でなく、京都南禅寺界隈や代官山の街並みなど、周辺地域も含む環境を保存しようとするものです。

伊賀上野城下町は上野城下町と坂倉準三の近代建築群との一体で選定されました。江戸時代の城・城下町の街並みとコンクリート造近代建築の調和した景観は世界唯一と矢野さんも説明されていました。

後半は、三重の町並み保存活動に多数関わっている三重大学の浅野教授がコーディネーターを務めるパネルディスカッションです。パネリストはドコモモの鰺坂徹さんと伊賀市内の旧家を活用している映画監督の塩崎祥平さんと明治時代からの地元書店の店主の岡森史枝さんです。

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鰺坂さんは、時代を超えて存続する建築は、時代時代の積み重ねでその価値を上げて行っていることをフィレンツェのドーモが各時代の増築を残しつつ、現在に至っていることなどを例に挙げたお話をされました。

映画監督の塩崎さんは、地方の魅力を抽出する映像作りの価値、地元発見の魅力を、ご自身の出身地を舞台とする映画づくりの経験を話されていました。

代々地元の岡森さんは、坂倉準三の学校に通われた思い出や自慢できる建物を日常的に見て育ってきた経験とご自身の取り扱っている書籍について伊賀の街について書かれた本が他の街のものに比べ著しく多く、伊賀に人たちの町への関心が高いことを感じているとのお話しでした。

今回の会場には満席の100名以上の来場数でした。単体の建築の保存のイベントでは、建築関係者が大半のイメージでしたが、今回の選定は城下町との一体だったので一般の人たちも多いようでした。街の歴史と関連付けた建物保存の運動の可能性を可能性を感じました。

 

 

 

晴れの地鎮祭

このところ寒い日が続いていましたが、今日の地鎮祭は暖かな日差しで絶好の地鎮祭日和でした。

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敷地の奥は土手もなにもなく川という、滅多にない魅力をもった土地です。

この計画の課題はおおよそ築10年となる既存住宅と一体として全体を感じさせることと、いわゆる古民家といえる既存家の良いところに負けないくらい快適で楽しい家を目指すことです。

河川にかかる法規制など、いつも以上の行政折衝にずいぶん時間が掛かかってしまいましたが、ようやく工事に着手できます。

三重短大 授業2

昨年12月に住宅設計の授業協力をさせていただいた三重短大に成果を見せてもらいいきました。課題は先週が締め切りでしたが1/3程度はまだ未完成とのことでした。

並べられてた模型は大半がフルカラー、素材感を示す材料でできあがっています。私の学生のころは、白い模型がほとんど(色つきだと労力が倍以上かかるので)だったので、結構な労力です。図面も若手建築家のプレゼ図面が細い線だけということが多いのに、昔ながらのきちんとしたダブルラインの図面です。これも練習ですから、書かざるは得ませんが、時間がかかります。

指導されている木下先生によると模型は、多くの学生さんはのめり込むほどでつくられいるとのこと。特に家具作りは楽しそうにやっているそうで、思い入れが見てとれます。

1年生なので、プランニングや図面表現は、未熟で書ききるのがやっとという感じで、個人の主張としてはまとまっていないのはやむをえないところでしょう。模型のほうはプランニングとかに関係なく、今風の柔らかい雰囲気が出ているのを感じました。いろんなところで材料をみつけ、ミニチュアハウスを飾っていくようなつくりで、小さな造花や柄の紙を建築模型に入れ込んでいくのは、今の若い建築家たちの感覚に通じているように思えました。ざっくりした建築の心地よさを感じるものです

蓄熱床暖房の家 竣工

蓄熱式の床暖房を採用した家が竣工しました

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高齢のご家族が家におられることが多いとのことで、常時暖房にメリットのある蓄熱式を選択しました。基礎を蓄熱体として利用するので家全体が高効率で暖房されます。もう引っ越しされて数日過ごされたのですが、これまでお住みの古い家から比べると断熱気密性能も向上し、暖房器具の風も感じず、家の中どこでも寒さを感じない室内環境にご満足いただけたようです。

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南側は大きな開口で家の中に居ても、外のように開放感のあるリビングとしました。

天井は高くても、床暖房なので温かく過ごせます。バリアフリーを目指して床下空間を最少に抑えています。今もところ必要はないですが、道路から車椅子にも対応したスロープで室内に入れます。

床暖房は日本ではまだ一般的でない方式を採用していますが、ほかの構成要素は、大手住宅資材メーカーの製品を使っています。お住まいになる方にあわせた部屋のつながりや細部の寸法配慮をして、必要最小限かつ便利で、空間としての雰囲気もよくなる家となるよう心掛けました。

三重短大 授業

日本建築家協会の社会文化活動の一環として、津市立三重短期大学の住生活設計の授業協力に行ってきました。

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授業内容は、生徒さんが取り組んでいる住宅設計へのアドバイスです。36名を3人で分担し、およそ3時間で12名の設計を一人ずつ見させていただきました。住宅のおおよその全体規模、住人の構成・生活志向は決められているものの、課題の敷地は一般的な住宅地で特徴がなく、自分で多くのことを決めなければならないのは、1年生にとっては難しそうでした。

自分の良いと思う家・部屋のあり方を提示するのには、まだ至ってない子が多く部屋を描き切ることで手一杯な感じでした。やっと部屋を書き終えて、これからどうしていけば良いかとの相談がほとんどでしたが、実際に書いて設計が進んでいくことを楽しく思っている感じは伝わってきました。自分のアドバイスから、なにか発見してより楽しい設計になればと、ちょっと熱中した3時間でした。

日本国内では、建築はどちらかというと縮小産業ですが若い人たちが、自分と同じように建築に興味をもっているのを見ると、まだまだ後についてきて来てくれてるなといつもほっとします。

 

 

みえ木造塾 安藤邦廣さん講義

第6回のみえ木造塾は安藤邦廣さんの講義です。

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杉の厚板を使った建物をつくられています。戦後盛んに植林された杉が多くストックされているそうで、積極的に活用されています。

古来の手法、柱の間に板を落とし込んで壁をつくる板倉の家を作られています。板をタテヨコに2重に張り込むことで、2.2倍の壁倍率の認定と、防火構造の認定を取得され、板のみで内外壁をつくることを可能としてます。壁天井の仕上げがなく、床も厚板を使用し、杉のみで構成しコストも抑えられています。

屋根も厚板で直天できれいな空間となります。断熱は板の上の垂木の間に断熱材を置きき、断熱を確保しています。

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東日本震災の仮設住宅をプレハブ住宅に負けない早さとコストで供給したそうです。板倉の仮設住宅群は、雰囲気も良いです。分解可能な板倉の家はその後県営住宅に再構築されたそうです。震災後の住宅地で見られた低価格ハウスメーカーの家で作られる住宅群よりずっと豊かな心象です。

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厚板の杉は、比較的安価で一般的に入手できそうなので、住宅に天然素材を取り入れるのに有効に思えます。

防潮堤

防潮堤の現況

仙台近郊 山元町の防潮堤。

山元町内すべてに建設されているようです。ここでは6mほどの高さがあります。

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防潮堤の内側には松林の再生が進められてます

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牡鹿半島の防潮堤。

入り江全体に防潮堤が続いています

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自然に畏敬の念をもつ日本人の心に沿った手法はないのかしら

防潮堤のない集落、ここでも海際の家はなくなっています

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海はとてもきれいでした

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