八武組 設計ブログ

ハッタケグミ:三重県四日市市の建設会社 設計メモです

三重木造塾 穴太衆

第3回木造塾です。今回は午前中に塾生同志の意見交換会

f:id:hatt88:20170805185335j:plain

18名の方が近況を簡単に発表されました。特に三重県産木材の利用のために熱心に活動されている方が多いように感じました。

午後は、石積技術で有名な滋賀の穴太衆(アノウシュウ)・栗田さんの講義です。興味深い講師なので、いつもより聴衆が多いようです。

f:id:hatt88:20170806003732j:plain

織田信長の頃から15代続く、穴太衆の由来や穴太衆の特徴である強固な野積みの解説などをお話しいただきました。

石が個々に動くことで力を分散すること、水も排出するためにも、コンクリートで固めないことが重要になるとのこと。実物実験で擁壁ブロックコンクリート固めの倍の耐力が実証されたこともあるそうです。

また熊本城の被災地に出向いた際の専門的立場からの見解をお話しくださいました。

以前のように石積が行われることがなくなり、存続が危ぶまれる職種ですが、海外で日本の石積の良さを広めるよう活動の幅を広げることをされているようです。

一生掛かっても、完璧な仕事はできないと、常に高みを目指す仕事ぶりはうらやましく思います。

GINZA SIX

 少し前に話題になったGINZA SIXに、設計協力した香水店Fuegia GSIX popup shopがオープンしました。アルゼンチン・パタゴニアの植物から発想したオーガニック フレグランスブランドです。

f:id:hatt88:20170726201744j:plain

f:id:hatt88:20170726200933j:plain

1か月間の短期的な店舗なのですが、商品のイメージを損なわないよう上質な印象が必要なので、ほかの場所でも同様の短期店舗を可能とするものとして、少しコストを掛けた品質のよい家具で構成することとしました。日本ではまだ認知度が低いブランドなので、ブランドの特徴を伝えるべく、アルゼンチンの異国感・ちょっとワイルドで強い印象を、ブランドのイメージカラーで統一して表現することとしました。

f:id:hatt88:20170726202341j:plain

この10年ほどで銀座の中央通りのビルは一新されました。どのビルもファサードに気合いが入っています。多くの著名な建築家が手掛けていて、建築の勉強にもなります。

GINZA SIXも世界的に有名な谷口吉生さんの設計となっています。

 

 

本日、地鎮祭

年配のお二人のため家 。地鎮祭が慎ましく行われました。このところ高温で心配していましたが今日は曇りがちで、日和的には恵まれました。

f:id:hatt88:20170725104545j:plain

二人が暮らすために必要なものだけの構成で、1LDKですが、少しゆとりが感じれるように計画しています。新鮮な生活となるようにと提案したことの多くを受け入れていただいた責任重大な物件です。

祭事のあとのお話で施工の丁寧さにも期待しているとも、おっしゃられて益々責任重大です。期待を上回る良い家にしたいです。

阪田誠造さん納骨式

前職の坂倉建築研究所で当時所長を務められた阪田誠造さんの納骨式に参列しました。

一周忌にあたる7月15日に四谷の聖イグナチオ教会地下の納骨堂内に納められました。この建物は阪田さんが設計コンペを通して設計し、1999年に竣工しました。(私もコンペ時はドローイングの一部を手伝いました)

納骨式の神父様は、建設時の主要メンバーをされていた方で、建設前にドイツの様々な聖堂を見に行かれたことなど、阪田さんと新しい教会を作っていったご苦労をお話いただきました。

f:id:hatt88:20170715092044j:plain

竣工当時に比べると、ろうそくの煤など、使ったことによる汚れがついて、より教会らしい雰囲気がでてきたように思います。ヨーロッパでも近代以降の教会は、比較的質素な材料で、装飾的なものの少なく、そのような教会に近いものを感じました。

時間の経過が建物に重みや人々の愛着を作っていくのでしょう。

建設時、阪田さんはここに納骨されることは、お考えではなかったように思いますが(容易には納骨は許されないと聞いています)、

聖堂がこの先200年くらい経ったときに、設計者もここに眠っているというのは、建築家としてはうらやましい栄誉だと思います(聖堂としても値打ちが上がるかと)。

f:id:hatt88:20170715105632j:plain

 

 

三重木造塾 中川武先生

今年度 2回目の三重木造塾の講義が三重大学レイモンドホールにて行われました。

冷房設備のない(建築的意義は大いにあるのですが)レイモンドホールで、気温30度を超える中、「日本の住まいの歴史」と題した熱意あふれる講義でした。

f:id:hatt88:20170708133334j:plain

f:id:hatt88:20170708143854j:plain

講師は明治村第6代館長・早稲田大学名誉教授の中川武先生です。先生には大学在籍中に日本建築史を教えていただいています。

建築史研究またアジア各国を周られるなかで見出された「不羈の構え」の大切さについて熱の入った講義です。

「不羈の構え」とは経済的・政治的な事象にとらわれくことなく、透明感・流動感をもって丹精込めて作られるものを指し、発展した社会から失われつつあるものとのことです。また丹精込めた造りの細やかさだけでなく、時間に関わる感性も見過ごされつつあることを指摘されていました。

住宅の基は、平安時代寝殿造りにある屋根のみで境界のない自由で浮遊感のある空間で、理想の住宅はそこにあるとの説は、最新の建築でも目指している空間思想に通じるように思います。

住宅の単体のことだけでなく、近年カンボジアに進出したイオンモールを例に挙げて、本来の都市の、個々の小さい要素がぶつかりあって成立する都市の形態・魅力、そこから特徴つけられる伝統文化が失われることを危惧されていました。

講義の後半には、体感しておくべき建物として、茶室・民家・庭・寺社などをご紹介いただきました。これまで訪れたことのあるところもありますが、先生のお話を踏まえ、新たな見方ができそうです。

学生のころ、先生の講義は難しい(普段のとても心易くお話しただいていたのでなお更)印象だったのですが、今回のお話しはとてもわかりやすく、共感する部分が多かったので、今の私の見識は大学のころの教えに基づいているいるところが大きいと感じました。

古民家再生 見学

多気町の山路工務店さんのご案内で多気町上出江の古民家再生事例を見学してきました。

f:id:hatt88:20170701133130j:plain

設備・断熱をいれた改装費用は新築の60-70%くらいだそうで、低コストで再生した印象です。施主さんは設計士さんで、役場のあっせんで町内の物件の中から、この家を選んで購入されたそうです。程度の良いものだったので、改修費用が抑えられたのでしょう。施工の方に伺うと水回りのところは土台を取り換えたようですが、屋根は触らず、柱の継などもなかったとのことです。

この地区には同様な形態の古民家の空き家が数件ありました。役場の方も見に来られていて、このような物件が増えて、住民が増えるように力をいれているとおっしゃっていました。

この日は、古民家保存会の耐震診断の実演もありました。その方法は、外部地面と建物内に振動計を設置し、双方の揺れを計測し、建物の周期を見ることで耐震能力を推測するものです。この古民家は見えない部分で金物補強などを施し、相当の地震では倒壊しないと判定できているそうです(この診断とは別に耐震設計をしているそうですが)。

新築で古民家のような開放的な家をつくる法的認定はできていませんが、改修の場合の安心感には効果的な診断となっています。

池原義郎先生を偲ぶ会

5月20日に逝去された早稲田大学名誉教授 池原義郎先生を偲ぶ会が大隈記念講堂で行われました。

f:id:hatt88:20170627120404j:plain

先生と身近で接しさせていただいたのは、わずか3年間でしたが、自らの作品に対する思いの説明や、当時先生を訪ねられていた多くの著名な建築家との会話、国内外の著名な建物に対して感じることのお話、学生の作品に対する厳しい評価などを通し、建築に関わる上で必要な感性と理念の根幹が作られたように感じています。

f:id:hatt88:20170627115951j:plain

会の始まる前に、比較的最近に収録されたインタビュー映像が流されました。「建築はただ機能的に作り上げるだけではダメで、人間性がそこに加わらなければいけない」とお話されていたのは、最新の技術や素材にとても興味を持ちながら、細部の作りに熟慮して詩的と評価される作品をつくられていた基本スタンスなのでしょう。また作風はずいぶん異なると思える先生の師、今井謙次先生の大切にされたいたところです。

 

この数年で先生と親しい交流のあった同世代の建築家、高橋テイ一さん、宮本忠長さん、阪田誠造さんが逝かれました。直接お話を伺う機会があった方々で端正、厳格に作り上げていく建築の凄さを教えていただきました。この後の若い人たちには、そんな機会がなく、違った建築の世界になっていくのでしょう。

www.hattake.co.jp