八武組 設計ブログ

ハッタケグミ:三重県四日市市の建設会社 設計メモです

役員室 改装

10年来、お世話になっているクライアントの役員室の改装工事がほぼ完了。什器が入りした。

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銀座の古いビル内です。竣工当時からのセントラル空調や直管の蛍光灯の撤去、昔よく使われた砂目の壁仕上げを一新しました。

建築工事は古いテナントビルでの改装ということと将来のレイアウト変更を考え最小限とし、色合いのみを調整したシンプルな内装としました。

モジュール家具を採用し、秘書ゾーン・社長ゾーンに空間を分けています。この家具は50年以上継続しているもので、引き出しやマガジンラックなど様々なパーツで組み上げることができ、将来の改装にも対応できるものとなっています。つくりも上質で部屋のグレードを上げる効果も十分です。こういった家具づくりは、欧州のメーカーが得意とするところで、国内メーカーは価格の安いものやデザイン寿命の短い新製品指向になってしまっているのが残念です。

現状モノトーンですが、アートワーク・植物などで少し柔らかい印象に変えていきたいと思います

 

 

みつわクリニック 見学

安城駅前のみつわクリニックの見学会に行ってきました。設計は藤井亮介さんです。

藤井さんは、旧職場で最後の物件を一緒に担当した仲間です。

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心療内科・精神科のクリニックで、患者さんに対する配慮が特に求められる施設です。

ユーザーの要望をよく理解し、建物に反映させることが建築計画の基となっています。

閉鎖的でなく入り易くありつつ、外部からは見られにくいということがこの形態の理由だそうです。

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最上部の天窓は、採光、空間の抜け、効果的な自然換気などに役立っています。

空間の組み合わせとモジュールを守った表現で丁寧な設計がなされた特別な印象がありました。

施設の要求から汚れない内装を選択するため、床、壁がビニル系素材となっていることが、やさしい空間づくりの妨げになっているように思えました。機能的な要求と心理的な効果を両方を満足する方法がないものかと。

地方都市の建物

仲良くしている若い設計士さんが、昨年一番の注目作と言っていたので、新潟県十日町市の文化交流センターなどが入る「分ジロウ・十ジロウ」を見てきました。設計は青森県立美術館新潟県の潟博物館、ルイヴィトンを設計で著名な建築家 青木淳さんです。青木さんは独立当初から(たぶん磯崎事務所に在籍のころから)内部と外部が交錯した建物をつくり続け、その構成の空間づくりにおいては日本一と思います。今回見に行った建物は既存改修なので、内外の交錯する動線はつくりにくかったと思いますが、雪国の特徴である雁木も活かして、車道・雁木・吹抜外部スペース(吹抜で3層目が室内)・室内が全開口の建具で一体となりえるグラデーション的な内外のつながりを持っています。

派手な空間はありませんが、よく公共建物で使われる既成の建築パーツは使わず、センスの良さを感じる独自の雰囲気を作っています。こういった作りは手間が掛かりますが、設計者や施工者の労力が感じられ、空間の楽しさも使う人に訴えてくるように思います。建物としては地味ながら、使う人に少し新鮮で、少し幸せな気持ちにさせる地方の建物の良い見本のように思えました。

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十ジロウ 1階はギャラリー、2階は貸ミーティングスペース、3階は創作スペース

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雁木内側の吹抜外部スペース

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ギャラリー内部、明るいところが道路。

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事務室もオープンな感じで身近な施設感があります

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鉄のパイプと板を使った手摺

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2階の貸ミーティングスペース。上部格子天井に木製柱を固定する仕組みで多様な間仕切りに対応。

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ぼんやりと光の色が見えます

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3階の創作スペース。陶芸などできるようです。廊下上部にダクトがまとめられ建具上を通ってます。ルイス・カーン(アメリカを代表する建築家)の建物も同じようなことします。

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こちらは分ジロウ。交流センターやシルバー人材派遣の事務所がはいってます。

十ジロウも同じようなベージュの外壁と白い内部。ベージュは本来ちょっと古臭い色使いですが、ここはそんな印象は薄く、やわらかくちょっとおしゃれな感じ。

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道路側から

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内部から。建具を開けると大きくつながります。

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横にある管理・事務スペース。同じように一体化しそうなつくり。掲示板などで管理している人の様子は微妙に隠れてます。

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2階にある会議室。都会的なセンスを感じるカーテンでくるまれています。入り口側にも回るので視線も柔らかく遮り、個室感を出せます。

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裏階段もきちんとしてます。

この建物の大きな特徴の一つは、コンペによって選ばれた設計者と市民が話し合って施設をつくっていくことにあります。コンペの審査員に有名なコミュニティーデザイナーの山崎亮さんなど、地域を活性化で活躍するメンバーに委託したことも効果的だったようです。青木事務所は設計開始段階に現地に分室をつくり、所員を常駐させ設計を進めたそうです。分室には地元の多ような方々が出入りし、地元の実情などを設計者が実感して施設にアイデアを盛り込んでいったようです。

良く知った人たちの施設と思えば、設計者がいい加減なこともできなくなるでしょうし、設計者が一生懸命考えるところを感じた市民は、これまで経験したことないことも、許容しやすいと思います。その成果が、ちょっと危うかったり、コストが多少かかっても、地元独自の魅力ある建物づくりにつながったように思えます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

七宝展

東京庭園美術館で七宝の展覧会みてきました

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昨年、住宅をつくった稲沢市の手前、あま市が日本の主産地と知って、七宝に興味深々となりました。

展示されているのは明治・京都の並河靖之さんの作品でしたが、展示の説明の中であま市からの影響についても触れられていました。

展示の七宝の凄さは、その緻密さです。細かすぎて普通には見えないほどで、拡大スコープが貸し出されていました。それなしでは鑑賞できません。

下絵でさえ、見えないのに、釉薬の仕切りの板を据え付け、その小さな隙間に釉薬を正しく入れる技術は、とんでもない集中力と根気が必要に思えます。

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一つ花びらが2mm以下の大きさです。背景の黒もとっても深い。黒だけでなく紺なども入っているそうです。

 

七宝は一人の芸術作業というより、多くの職人が関わる工芸品。ある意味、工業製品で並河さんはかなり財を得たようでした。主に買い手は外国人で、英国王室も顧客リストにありました。国内需要を伸ばすことはできず、外国からの受注が少なくなるとともに衰退していったようでした。

日本人の作る自然物の表現は、柔らかく繊細で、日本独特の魅力が感じられ、世界中の富裕層へアピールできる現代は、当時以上に有望な産業になるのではと思えます。

陶器に比べ、薄い素材に模様を描く七宝は、たばこや香水、名刺などの様々な実用に供するケースに使え、販路が広いように思えます。

明治七宝の見所、現在の七宝の製作法の上映もあり、七宝をよく理解できる展覧会でした。

また庭園美術館で七宝の展示は空間とマッチしているイメージですが、七宝の細密さに引き込まれ空間は忘れるほどでした。

世界に誇れる東京はどこですか

東京メトロトリップアドバイザーのキャンペーンに、あなたの誇れる東京を問う吊り広告があります

再開発が進む東京で世界に誇れる東京が残ってくるのか疑問です。例示されている浅草は、東京のもつ真の魅力を持つとは思えません。ほか歌舞伎町も依然のダークな印象も薄まった感があります。秋葉原は依然と違った特徴が出てきてちょっと世界の人を惹きつける要素を持っているような気がします。

カオス(混沌)という言葉が流行った80年代後半、世界から見た東京の魅力はカオスという言葉が相応しいものだったように思います。

私世代の感覚では、渋谷はカオスを代表する街の一つと思われていました。その渋谷駅も再開発の場となり数年後には新しくキレイな駅前となるようです。

現状工事中は、あやうい鉄道と人の動線、新旧の街でちょっと魅力的です。

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JR山手線と埼京線の上に地下鉄銀座線の仮設高架が通ってます。その下が東西通路。

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旧文化会館の跡に建ったヒカリエと銀座線。この下に東急線営団地下鉄、地表のすぐ下には渋谷川が流れています(今回工事で川の位置も変えられます)。

渋谷駅の魅力は谷地形の中に継ぎ足されてできた複雑な動線と小さく囲まれたスペースにあると思います。関わった多くの人の労力と時間によって作られた魅力です。  f:id:hatt88:20170310191205j:plain

密度感あるハチ公広場もあとわずかで無くなってしまいます。

 

今進められている駅の再開発は、そういった渋谷の魅力を十分理解されている著名な建築家の方が関わっているのですが、果たして短期間で、これまでを超える魅力をうみだせことができるか、大変な仕事だと思います。

世界の魅力ある場所で、短時間で作られたところはあまりないように思えます。現状の東京の開発の方向性は将来に他の場所とは違う何かを残せるのか、ちょっと心配です。

住宅3軒

住宅3軒検討中。当然ながら、それぞれ条件が異なってます。

20代4人家族の家

若い世帯なので、できるだけコストを抑えるのがポイント。子供さん2人いらっしゃるので、やはり寝室3部屋の現代的な家が希望。希望の部屋を確保し、できるだけコンパクト・シンプルにすることが目標。

敷地は広いので、将来の余地を残すことや庭を楽しめるプラン、魅力付けを検討。

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高齢者2人の家

ほぼ一日中、家で過ごすことが多い生活に応じた提案。お互いを視認できるよう、壁窓を配置。プライバシーを守りながら、半屋外空間で過ごせたり、室内の通風を確保できる家。外のように広々とした日常生活の環境づくりを検討。

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旧家を継続する家

川に面した大正・昭和初期の旧家の一部を解体し、現代住宅の利便性を持った住空間をつくる計画。今回新築する家と古い家に一体感をもたせ、家の格を維持することが課題。新しく作る部分での高機能な快適な暮らしと古い部分のもつ開放的でより自然を感じる双方のメリットが活きる家は楽しそうです。これまで以上に、川に接する部分をつくり敷地の魅力を満喫できる家を目指します

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堀部安嗣展

TOTOのギャラリーで開催されている堀部安嗣展「建築の居場所」を見てきました。

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きちんとした作品づくりで人気のある方なので、学生さんより、実際に建築の仕事をされているような感じの方が多くみられます。展示は小さな模型と実際に使われた図面の展示、それと30分間の作品紹介ビデオです。みなさん熱心に図面を見ていらっしゃいました。いつもの展示映像より格段長いビデオは、単体の写真では察しにくい建物のしっかりした雰囲気が伝わってくる感じです。堀部さんの建物を使っている人たちのインタビューからは、建物を使うことによって、さらに建物が良くなるように成長している様子が想像でき、羨ましく思えました。

堀部さんの建物は、吉村順三先生の門下の方々と同じように、きちんとしています。たぶん堀部さんは直接先生から学ぶことはなかったかと思われますが、その分、直弟子方々とは違う新しい感覚もお持ちで若い人たちにも人気があるのでしょう。

吉村先生の作品を見ると、「設計はこのくらい、丁寧にしないとダメだよ」とプレッシャーを与えられる気がするのですが、今回のビデオからもそんな感がありました。

ただ、きちんと設計するとコストが掛かってしまうのがやり難いところです。

 

 

www.hattake.co.jp