八武組 設計ブログ

ハッタケグミ:三重県四日市市の建設会社 設計メモです

多治見の建物

多治見市に藤森照信さん設計のタイルの美術館ができたので見学。

「多治見市モザイクタイルミュージアム」2016竣工。日本のモザイクタイルの発祥の地という笠原町の街中に建ってます。

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外観は藤森さんの得意とする自然素材と不整形な輪郭、屋根の木で、インパクト十分です。来る親子連れはカワイイを連呼してます。質感の良さが際立つサイズ感・使い方でくまなく納められて、一般の方も本物の良さを感じられるので、好感がもたれるのでしょう。

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建物は4建てのビルとなっているので、室内は藤森さんの得意とする高さ方向の広がりは最上階のみで、いつもの面白さは感じられないように思います。藤森さん建物は手作りで地面から生え出たような感じが良いのでしょう。

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展示の内容は、当地のモザイクタイルの歴史と現在のタイル産業の案内です。昔の家々にあったタイル張りの流しやお風呂など、結構魅力的な品が展示されています。

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現在のタイル情報を見せるところでは、当地で生産しているタイルについて、在中している方がいろいろ相談を受けていました。こちらがほしいタイルイメージを話すとそれに近いものを地域内でつくってそうなところを教えてくれます。小さな会社の独自のタイルを探すのは困難なので、とても役立つ施設です。

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今井兼次先生のモザイクも笠原町産だったようです。

「セラミックパークMINO」 磯崎新 2002年竣工

陶器の産地に陶器に関わる体験と交流の場として作られた展示場・ホール・ミュージアム・交流施設の複合体。

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うまく山地形に埋め込まれるように配置されていて巡回していて楽しく、ボリューム構成も流石に上手です。各ディテールもきちんとしていて、かなりコストを掛けている印象です。正統な建物なのでもっと使われると良いと思います。

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滝を介してつながる茶室部分。茶室の内部は見れませんでしたが、きちんと和風です。水中の石も色、仕上げに変化を持たせ、自然感のある上質な人工滝を作っています。

美濃焼ミュージアム

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美濃陶芸を展示する施設。多治見周辺は土と燃料になる木材が豊富で遺跡から出土するほど古くから焼き物の歴史があるようです。隣接する瀬戸が有名でひとっまとめで瀬戸物として扱われていたそうで、瀬戸以上に焼き物が多いようです。ミュージアムには多治見の焼き物の歴史がコレクションとともに説明されています。

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千利休の好みの楽茶碗にならった瀬戸黒の茶碗や志野焼き、それに続く織部、その後の小堀遠州好みの御深井(おふけ)などが歴史順に並べてあり、わかりやすい展示です。

企画展では、各地で賞を獲得した地元の若い作家の展示がありました。(四日市万古焼をルーツとする白木さんの作品も。)

大きな施設ではないですが、程よい量の展示で焼き物の基礎を理解するにはちょうど良いものです。

「多治見中学校」象設計集団 2001年竣工

Team_Zooの建物はできた当時はちょっとバナキュラー表現が重い印象がありましたが、時を経ると配置された植物や建物の経年変化で、その特異性は薄くなって、クールな印象の建物より、印象が良いように思えます。

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2001年竣工なので、昔のよりは爽やかな建物です。それでも複雑な建物形状とたくさんの植栽は、今風のものとはかなり異なります。ここも時間が経ってなじんでいるように思います。

先日、岐阜市のメディアコスモスを見てきましたが、岐阜県、古くから建物に力入ってます。

 

 

製材所視察

進行中の住宅の外壁材の候補となっているヒノキ材を松阪市内の製材所に見に行ってきました。

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120年もののヒノキ。通常のものより細身に育てている分、目が詰まっていて製材した見た目は趣深いものになります。少し大きな材となっているので柱としては使うのであれば、寺社のような大きな建物向きです。

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今回は表皮のついているところも使って、コスト削減と意匠的な柔らかさの表現の両得を目論んでいます。

歌舞伎のヒノキ舞台に使う原木の端っこをうまく使えれば、耐久性も美しさも格段に良いものになります。

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以前活躍していた焼却窯。鉄板の建物みたいで魅力的です。

その後、ウッドピアの木材加工場も見学。床・壁に使う仕上げ材製作の加工工程を工場内を見学しつつ、細かな配慮点について説明していただきました。製材所や加工工場の方の木への熱い思いの入ったお話に、木の良し悪し見極める一般の方の見識を育てる必要性を感じました。

 

稲沢の住宅

稲沢市に設計施工で作っていた住宅が竣工しました。

31坪の若い夫婦のための家です。小さくて可愛い印象になるように階高を抑えたり、屋根勾配を少し急にしたりしています。周りの住宅より小さなボリュームとなっています。

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外形は小さくなりましたが、内部は吹抜や屋根形状を活かした勾配天井やロフト空間をとって狭さを感じないものにできてます。

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お施主さんの希望に合わせ、いつもより強い印象のインテリアになってます。お施主さんは親しい間柄の方なので、こちらの気持ちや心配している点など十分相談でき、こちらの想定していないアイデアもいただいて、新鮮な結果となりました。

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吹抜のリビング。2階部分の大きな窓で明るく暖かな室内です。夏は大きく出した屋根で直射は遮ります。テラス部の半透過の屋根には可動シェードがついてます。

窓メンテ用の通路は細い手摺として遮るものを最少としています。写真では、より見えにくくなっていますが通路下にホームシアター用のスクリーンも埋め込んでします。昼間は広がる水田を。夜は大画面を楽しめます。

 

祝!竣工式

今年の夏に完成したオフィスの付属施設となる社員寮の竣工式が行われました。(日柄が良く本日の式典となりましたが、一部工事は残っていますが)

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優しい感じにしたいというご意向にそって、柔らかな色合いの外観としました。

寮なので、入居者の負担を減らすように、家具・カーテンも準備しました。外観のイメージに合わせて白い壁とベージュ系の木の色合いでまとめてみました。

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経年の使用にも耐えるよう交換しにくい床は無垢のフローリングとしました。この本物の木の存在感で、インテリアの印象がぐっと自然志向的なものになったように思えます。

 

第1回「みえ歴史的町並みネットワーク・ゼミ」

第1回目の「みえ歴史的町並みネットワーク・ゼミ」が催されました。

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東日本大震災の後、起こり得る南海トラフ地震などの震災に対する備え、復興のための事前準備を研究する会として、有志で2年ほど活動してきたのを、今回から、建築士会・日本建築家協会・行政・市民活動団体など一同に集まる、オール三重の会に広げた第1回目の会です。

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前半はこれまで活動報告と静岡県での同様活動を進めている塩見寛氏(静岡県ヘリテージセンターSHECセンター長)の静岡での活動説明でした。

静岡県内の歴史的町並みの特異性の説明を通し、一般の人たちへの地域の歴史的意味に関心をもたせることや町並みを維持していくための各団体の協定・行政との連携の現状をお話いただきました。

後半は「町並み保全と地元主体のまちづくり」と「空き家対策と民家の活用」と題する2つの分科会が行われました。

私の参加した「地元主体のまちづくり」は、白子・関・二見・一身田・松阪・亀山の町並み保全について活動者自身からの報告です。

一般に町並み保全は観光化に向けて行われますが、今回の事例の大半は日常の生活する場として整備していくものです。住民に自らの町の価値を認識させることで、永く定住しコミュニティーを維持させていくことが目的です。

これらの町は観光地化された町並みと違い、訪れた人にもこんな町に住みたいと感じさせるのではと思います。

今回のゼミは、防災的な内容は少なかったですが、県内さまざまなところで多く方が活動していることを知る会でした。

 

トラフ展

TOTOのギャラリーで行われている、プロダクトデザイン~建築設計のトラフさんの展覧会。

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これまでの仕事を紹介する展覧会ですが、ジオラマ的に紹介している展示物そのものが楽しそうで、個々のプロジェクトの印象が薄いほどです。別室映像展示もそのジオラマ展示の中に入った様子を写したもので、かなりの熱意を入れたことがわかります。

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これまでの作品のなかをNゲージの丸太列車が走ります

キレイな形を見せることより、物のなりたちや、見方をかえることでの気づきを見せるデザインのやり方は、建築家のなすデザインとして、あるべき姿だと共感します。それをキレイ見せるところが優れている方たちなのでしょう。

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養生ネットのプリーツ間仕切り

汎用品をつかって、これまでにない魅力を見せることも、コスト増は回避できないので、それを許容させる昇華度合、出資者の理解と余裕がないとなかなか通らないです。

 

 

愛知県緑化センター

愛知県豊田市昭和の森の中の展示・集会施設。設計は先日行った「みんなのハワイアン」と同じ瀧光夫さん、得意分野の植物関連施設で1975年竣工、当時BCB賞(建設業連合会)、2004年には建築家協会の25年賞を受賞した正統な建物です。

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建物は自然の丘に埋め込まれた下部とその上に浮かんだ四角形のリングの構成。下部2層は土を削り出したような小叩き仕上げのコンクリート造で周りの地盤に各層で接しています。

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上部のリングは鉄骨造で全面ガラスでコントラストが明確です。リングで囲まれた空間は屋内化された植物園となっていて(雨風の当たらないところで育てるのは結構難しいと思いますが)内部外部の植物が視覚的に混在して、建物も内外が一体化していて、ほかでは体験できない空間です。

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ガラス屋根の内部空間。アメリカの建築家ケビンローチのフォード財団ビルやディアカンパニーのような植物が身近にある建築空間に似ています。

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ラウンジや管理事務室のあるリングの全面ガラスもミラーガラスが使われているのも、ちょっとアメリカ的。

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植物を建物のいたるところに配置しています。建物防水上は問題が起きやすいところですが、思う存分やってます。管理運営している人たちの理解がないと難しと思います。

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雨水だけでなく、汚水排水も土中にあるため、植物の根との攻防はかなりあるようです。

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動線の設えも、クランクする経路や石積みとコンクリート壁の使い分けなど当時の建築家らしく、きちんとしています。

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いろんなレベルで外の地面に接していて迷路な感じもあって楽しい空間体験でした。

紅葉の映えるころで訪れるには良い時期の祝日でしたが、街の主企業の工場が稼働しているので、平日のように来園者は少ないようでした。

建物の隣には友好関係にあるオーストラリア庭園が造られています。オーストラリア産の植物は、変わった花や実、葉の色もアジアの濃い緑とは違った色合いで見た目にも興味深く、乾燥にも強いので適当に育てるには都合よさそうなので、最近注目しています。

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