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八武組 設計ブログ

ハッタケグミ:三重県四日市市の建設会社 設計メモです

阪田誠造さんを偲ぶ会

建築家 阪田誠造さんを偲ぶ会に参会しました。会場は坂倉準三・前川國男吉村順三共同設計の国際文化会館でした。阪田さんは私が前職の坂倉建築研究所入所当時に所長でした。入所当初のJRセントラルタワーズの設計から、関わった仕事を通し、建築家のあり方など多くのことを教えていただきました。

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お元気にお過ごしだった今年7月に急に体調を崩されて、1日も置かず急逝されました。この会は阪田さんと交友のあった著名建築家32名の方が発起人となって開かれた公的なお別れ会です。日本代表する著名建築家の方が多く参会し、参会者は300人を超える盛大なものとなりました。会は阪田さんとお別れをしみじみ思うというよりは、阪田さんのそれぞれの仕事に関わった施主や設計メンバーが当時の思い出や近況を交わす明るい感じで集う会で、いつも和やかに人と接していた阪田さんに相応しい会でした。

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建築家 槇文彦さんのご挨拶。ほかの皆さんも阪田さんとの思い出をお話されました。

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みえ木造塾 第6回

みえ木造塾第6回は構造設計の山辺豊彦さんの講義と木構造の載荷実験です。

前半の講義では、中大規模の木造建物の実例の紹介を通して、注意すべき事項のお話いただきました。

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後半は耐力壁の耐力実験です。塾生の考えた耐力壁を山辺先生の監修のもと、実験してその耐力を検証していきます。

1つめの実験体は斜めに小幅材をくぎ打ちした壁。一般に合板張りで対応する耐震改修に意匠的に見栄えの良い板材での耐力確保ができないかという試みです。写真のような装置で横から押したり、引いたりして1/150の変形時の強度を測定します。

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簡易な壁倍率算定では2.4倍と合板張りに近い強度を発揮しています。

引っ張り側の材は木が競ってしまい面外に膨らんでいます。反ってしまった木も木自体は破裂しているわけではないので、合板のようにグサグサにはがれて耐力の急激な下降はないと思われます。

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2つめは、塗り土壁となる壁の増強を従来の貫構造に準じた形としたもの。貫状に通し、交点でくぎ打ちしたものです。結果は約2.6倍。一般的な貫構造よりくぎ打ちの効果があったと思われます。より荷重をかけると耐力の増加はあまりありません。

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今回の試験体はどちらも高技能の大工さんが入念に作成しているのでその精度の良さも強度向上に貢献しているといえます。

実験は三重県林業試験場なので、公式なデータとして利用でき、実際の建物の申請にも有効となります。

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西伊豆の建築

伊豆大仁にある集客施設 みんなのハワイアンを見てきました。設計は瀧光夫さんで1997年竣工です。瀧さんは植物園建築の第一人者だと思います。茨城県水戸市にある公園施設を以前見学したことがあります。土のレベルまで下げたガラス開口と植栽との関係がとても良いです。緑化関係の書籍も出せるほど緑と建物の関係や植栽のために建築詳細にも研究されています。また建築のパーツに素材感を活かした細かな設計なのですが、どこかアメリカの建物のような大らかさが感じられます(後で調べたら、アメリカ留学の経験をお持ちでした)。

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この建物は元は、造園関係の会社が洋蘭の展示施設として作ったようですが、今は御殿場の有名集客施設の所有になっているようで、施設名称も柔らかくなって、その系列の商業施設になっています。

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瀧さんの建物は、植物の展示・研究の施設のお手本となるようなもので、公共建築が持つべき品格があると思います。作る建物はそんな雰囲気のものなので安い商業施設には向かないとも思えます。

屋根の上の緑化、20年以上の実績があります。中庭につながる半屋外の空間も特徴の一つです。

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室内から身近に感じる植栽。

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スロープもよく使われる建築アイテムです。緑化もされてます。

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日本で、このように見た目シンプルなガラスの壁面は珍しいと思います。

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1階の柱部分だけ区分けするように、コンクリートの仕上げが小叩きになっています。

今、この仕上げをすることは稀ですが、20年前までよくおこなわれていました。手間をかけた素材表現がコスト的には許容されていた時代です。

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トイレのトップライト。位置的に奥まっていて暗くなりがちなトイレに自然光を入れてます。立ち上がり部分は合板素地でワイルドなつくり。ちょっとアメリカンを感じる要素。

愛知県にも瀧さんの作られた愛知県緑化センターがあるので、そちらも行ってみたいと思います。こちらは公共性が高いのでもっと良さが発揮されているのではないでしょうか。

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帰りがけに三嶋大社に寄り、新しくできたらしい「大社の杜」という商業施設を見つけました。

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もと何か建っていたと思われるところに共用の屋外スペースをもった小さな店舗が集ったものです。裏や側道に抜ける経路があって行き止まり感がなくて入りやすい施設計画です。そう言った路地空間が魅力を出してます。近隣の建物の色も塗りなおしたようで中に入ると景色に統一感があります。

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階高を抑えて上下階の人の距離も近く、密度感のあるにぎわいを出してます。壁が銅葺きになっていたり、木張り、亜鉛メッキ素地の階段や柱など豪華な装飾ではないですが、素材感を活かした本物志向の空間です。こういう造りだと売っている商品も本物感が高まります。

三嶋大社の真ん前なので、人通りも多いので商業的には好立地です。ちょっと都会的な雰囲気になっているので若い女性がお参り後にお茶するには最適な感じです。この日は七五三参りで3世代の人たちでにぎわっていました。

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三嶋大社の本社前にある舞殿。壁がなくて柱だけの建物です。写真ではいまいちで分かりにくいですが透け感が気持ちよいです。また重量感がある屋根がボリューム感のない柱で支えている見た目は、どことなく浮遊感があります。

 

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都心の家 見学会

六本木に近い都心の住宅地に建つ小さな住宅の見学会。地上3.5階地下0.5階の鉄骨造90m2ほどです。設計は伊庭野大輔+藤井亮介+沼野井諭さんです。30代前半の若手建築家の初めての新築作品のようです。これまで著名な設計事務所の所員として、働いている方々なので、初めてといっても、きちんとできてます(竣工前なので工事中ですが)。

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建物はそれぞれの部屋が箱として外部からもわかるような構成です。北側の接道で隣地はびっしり隣家があるため、壁面開口は最小限となり、明るさを得るよう各室天窓が設けれています。

日影規制を回避するために最高高さを10m以下にするため各部屋、低めの天井高さとなっています。

リビングの箱。一番大きい窓で、天井高さも最大ですが、普通の家と比べるとかなり低い印象です。仕上げを内外同じにして外部からの連続感を強めています。

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リビングの一面の壁は、有名な左官屋さんに仕上げてもらっています。天窓からの光でさらに印象的な壁になっています。壁面に平行な光が入ってもきれいに見える仕上がりは具合は、流石有名な職人さんです。

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キッチンとダイニングの箱。作り付け家具で無駄のなくスペースを使っています。キッチンも小さいながら、こだわりが見られます。

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お風呂の箱。開く窓はないです。壁際の天窓から、いい加減の光が落ちてます。

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今風の建物構成に加え、素材感もしっかりあって良い印象でした。

設計者の藤井さんは、前職の事務所の同僚でいっしょに担当した物件もある関係なので、この建物で考えたこと、それがどのような効果になっているかなど、本音を伺えて楽しい見学となりました。

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永富家 

兵庫県たつの市にある国の重要文化財に指定(昭和39年指定)されている民家。1822年に建てられたそうです。主屋だけでなく門や蔵など付属建物もよく保存されています。

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現在、永富家に関係する企業の所有・管理で非常に良い状態にあります。建物だけでなく建設時の板図などの多くの資料が残されているのも貴重です。

敷地は936坪、建物の面積は153坪と代々庄屋を務めてきた豪農の屋敷です。

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石敷きの正面が家の者の入り口、その左が主人の玄関、その左の入母屋屋根のところが来客(武士)のための玄関です。「在郷家臣」という武士並みの待遇をうけていたのでこのような武家のような造りが許されているそうです。

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使われている梁材は大きな松です。民家でこれほどの大きな材を使っているところはなかったです(写真では大きさわかりにくいですが)。

瀬戸内、山陽の街に近いこと、比較的近年まで使われていた(ご同行いただいた方は、今も残る竈で料理していたのを懐かしんで居られました)ことのためか、関東・越中の山際の民家より、上品な感じがあります。訪問した前日、お茶会があり、そのための設えがそのままになっていたことが主にそう思える要因ですが。

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↑この部屋は本来土間のなかの女中部屋ですが、雰囲気のある待合になっています。

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蔵などの外壁は焼杉です。瀬戸内、特に岡山近辺では多く使われている素材です。今でも使われていることが多いようで、この地方の材木屋さんでは焼杉の板材を常備品としてラインナップしているところがあります(リーズナブルな価格です)。

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オープンハウス見学

杉並区西永福駅にちかい住宅地の戸建て住宅。設計は遠藤誠さんです。

南北に細長い土地に中庭を作って各室採光できるプランニングです。

木造2階建て。

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北玄関から敷地のほぼ南端まで長い廊下をコンクリート土間の空間として通しているのが潔いです。この廊下が所蔵の美術品を飾るギャラリーとなるそうです。いつも以上に素材の種類は少なく、遠藤さんのこだわりの詳細と相まって、シンプル志向の良さがでているように思えます。

1階の大半は基礎底板を兼ねたコンクリート床のままで、その厚い床スラブの中に蓄熱を利用する床暖システムが組み込まれてします。温風をスラブ内ダクトで循環させるものでスウェーデン製だそうです。大きな熱容量のコンコンクリートを使った省エネ暖房です。納入業者の方もいらっしゃたのでパネル式床暖房との違いや蓄熱利用の事例のお話なども伺えました。

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蓄熱要素をいれた住宅の省エネということが最近気になっているところ、良い参考となりました。

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第5回みえ木造塾 エスノ・アーキテクチュア

みえ木造塾 第5回はアントニン・レーモンド設計の三重大学レーモンドホールにて行われました。講師は東洋大学ものつくり大学名誉教授の太田邦夫先生です。

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講題は「エスノ・アーキテクチュアとは」です。「エスノ」はエスノロジー(民族学)の略で、その地域や民族にごく一般的な建築や住居を指す言葉として、太田先生が好み使われているものです。現近代の様式化、インターナショナル化した建築に対して、取り立てた評価を受けない民家のようなものを示しています。

三重の地域性を重視した建物づくりができないものかと考えているこの頃にタイムリーな講題です。

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太田先生は特に木造に重点を置いて、世界各所のエスノ・アーキテクチュアを調査されており、紀元前からの木造の建物の変遷や各地で見られる形態の伝来への考察など、事例を挙げて講義いただきました。後半はエスノ・アーキテクチュアを作る技術基盤となるエスノ・サイエンスについて、整数比率による平・断面構成の研究を通じての説明でした。日本各所の遺跡に尺寸法をあてはめ、整数比率を使って建物が作られていることを演繹的に明らかにしていこうとする熱意ある取り組みをお話くださいました。

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↑ 三内丸山の柱位置を尺寸法に割り当てた図です。ほか多くの事例をご紹介いただきました。

先生のお話から、地域のごく一般的な建築が、その地で確立されたで実践的な寸法取りに基づいてつくられることが、ひとつの統一性につながっていると分かりました。

 

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