八武組 設計ブログ

ハッタケグミ:三重県四日市市の建設会社 設計メモです

祝 礼拝堂完成式

日本基督教団 四日市教会完成式に列席させていただきました。

今年1月に着手し、7月初めに竣工した耐震改修工事を行った教会です。設計は小粥建築設計室さまで、弊社は施工のみを担当しました。

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1950年が会堂献納で、その後伊勢湾台風の被災や施設増築を経て、60年以上使われてきた建物です。古い建物なので耐震性の改善が必要で、新築建替も検討されたそうですが、耐震補強で建物を残し、思いをつなぐことで皆さんの気持ちがまとまったそうです。

設計段階でできる限りの現況調査したものの、見えなかった躯体の欠損状況が解体後明らかになって、耐震補強の可否を問われるほどでしたが、設計の小粥さまと教会関係者の皆様の建物を是が非でも残そうとする並々ならぬ熱意のおかげで当初目指していた形で竣工できました。

式典は、完成記念礼拝と工事の報告を含めた祝会です。三重県の各所の教会の方々が多数参加され、教会が新しく甦ったことへの喜びに満たされた会でした。

仕事をやり終えて多くの人に喜んでもらえること、また将来にわたり永く残っていくものに関われることが建築の仕事の一番良いところだと改めて感じることができました。

旧黒澤家住宅

群馬県上野村の旧黒澤家住宅。桁間21.8m 梁間15.9m ほぼ総2階建て・切妻造り。

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19世紀半ばの建築、形態としては養蚕農家ですが、座敷・玄関(むら玄関・式台)など山中領の大総代の住宅としての特色があります。

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むら玄関と勝手口

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式台。右側には来客着替えのための6畳間があります。

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屋根はクリ板葺き、石押えです。クリ板が痛むとその板を差し替えて維持していたようです。クリ板や石の予備があります。

茶の間は土間に面した31畳半の吹抜のある空間です。

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1階階高は2.3m程度ですが、座敷部は上階を物置として上げて3m近くの天井高さがあります。

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2階はワンルーム。養蚕のためのスペースです。

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日間賀島

市内温浴施設ユーユーカイカンさんの企画する研修懇親会で、知多半島先端の日間賀島に行ってきました。

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観光協会・まちづくり協議会理事の方から、日間賀島振興の取り組みを伺いました。

周囲5kmの島に630世帯・2000人弱の住民。島の産業は観光業と漁業です。約100軒の旅館・民宿があり、そこで働く方以外は主に漁師さんで、水産加工業は、ほとんどないそうです。島はタコで有名ですが、冬のフグ料理が大きな集客要素となっているようです。漁業で最も多いのはシラス漁で、ほかにアナゴ漁・地引網・貝などの潜水漁など、全国的にも上位の多種の漁種があり、タコ漁はその一部だそうです。

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本土から2kmほど離れているだけなので少し船を乗るという手間はあるものの、名古屋へも対岸においてある自家用車ですぐと行けると、不便さを感じていないそうです。島で住み続けようと思う人が多いので、各所で心配されている漁師さんの後継者不足も、この島では問題ないそうです。島内の小学校の児童数は100人を超えています(四日市の街中よりも多い)。

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家々は、狭い土地に高密で建つ島らしい建ち方です。隣りの家の話も聞こえるほどでプライバシーの確保は難しいですが、島に住む人たちは、そういう暮らしが良いと思われているようです。大半の道路は車が通れない巾で原付が活躍しています。

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島の最上部に墓地があります。津波でもお墓は流されないし、ご先祖さまに見守られている感があって良いです。

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各戸に井戸があって水を自給しているようです。愛知県の島で唯下水があるのも自慢の一つです。

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島は観光業と漁業の人が一団となって島を盛り上げようとしています。他の地域より高額の組合費を出し合って、行政に頼らない島の維持運営を行っているそうです。

輪中生活館(旧名和邸)と大垣

岐阜県大垣市にある輪中生活館(旧名和邸)。当地域の歴知的地理特徴の輪中地区の代表的な住居形式を復元した住宅です。木曽三川の下流部に見られる水害対応の水屋をもった古民家を以前から見てみたいと思っていました。

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旧名和邸は、母家・土蔵式水屋・住居式水屋・納屋の4つの建物で構成しています。母家は明治4年に建てられたもので、その後住居式水屋が明治15年、土蔵は23年築だそうです。納屋も明治15年築ですが、損傷が大きく外観のみ復元で軸組は新しいものとなっています。

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明治初期の建物なので古民家としては比較的新しいです。復元整備されているので、状態がよく、昔の家の良さを感じるには、とても良い施設と思います。

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母家の半分は土間です。一般的な古民家の構成と同じで、炊事用のかまどがある土間部分は天井がなく大きな空間で、半外部的な気持ち良さがあります。居間など人の座る部分は天井があり、空間は抑えられますが、土間に対し落ち着いた心地よさがあります。

輪中の住居の特徴として、入り口近くの土間部分に非常用の木船が天井に備わっています。家の中に水を引き込んだ水場もきちんとしています。

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家の中には当時の日常の生活のわかる資料の展示があります。

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母家の奥には離れ座敷(住居式水屋)が1.6mの盛土の上に建っています。洪水時にはここに避難できるようになっていて、トイレもあるそうです。

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奥には2.2mほ盛土の上に土蔵式水屋があります土蔵は周囲の水田からすると4mほど高い位置となっています。

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水害の危険の反面、水の利便性は高く、井戸自噴式だそうで、地面から1.5mの高さまで水が上がるようです。井戸は今も水を出しています。

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昔の様子の模型(各建物の構成はこのまま)。屋根は本来茅葺だったようです。模型ほどは水が迫っていたとは思えませんが。

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入場料は無料で気軽に見れます。周りの集落の面影がないのが少し残念です。

ついでに大垣市内も少し散策。

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水の都と宣伝しているように水路があり、自噴式井戸も数か所解放されていて、街の魅力的には高いように思えますが、古い要素が少なく、良い雰囲気の界隈は見つけられませんでした。

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自噴の井戸は水量も多く、水を汲みに来る人もたくさんおられるようです。

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市役所前の公園の緑と噴水。よく水もなく放置さえている場合が多いのですが、ここは流れのあるきれいな水で豊富な水音も聞こえ、心地よさそうです。

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松尾芭蕉奥の細道結びの地としてもアピールしています。そこにも井戸があります。

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古い建物を活かしたレトロ風のチーズケーキ屋さんは、感じ良くおいしそうに見えます。こんな感じで古いもの活かしでお店が並ぶと良いのですが。

水路沿いの半分廃墟のビル、リニューアルすると楽しいそうな要素が感じられます。

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第4回 みえ木造塾

今年4回目になる木造塾に参加してきました。

午前中は、木造塾参加者相互の意見交換会で、それぞれの活動を発表する会です。

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自然素素材、在来工法に徹底した家づくりの設計士、自らの山の性質を活かし、広葉樹や混植の植林を試みる林業家、大工技能を絶やさぬように機械加工を避け、手加工を続ける大工さんなど、独自の活動に熱意をもって取り組む方々の発表には、多く刺激をいただきました。

午後は、パッシブ住宅を研究する野池政宏さんの講義です。

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少し前、ハウスメーカー各社が提唱していた「スマートハウス」のように省エネ電化製品を付加した家づくりではなく、家自体で省エネを実践していこうとするのが、氏の提案する「パッシブデザインの省エネ住宅」です。

その地域の特性を十分検証し、地域にあった配分で各省エネにつながる要素を採用することで、質の高い室内環境と省エネルギーを実現することを講義いただきました。

敷地の特性を分析理解して、活用するという建築家の職能に合致する考えです。

具体的内容としては、近々に義務付けられる省エネ計算を利用して、建物のパッシブデザインを実証的に検証していく方法などで、なんとなく採用していた要素の裏付けができるようなるとかです。たとえばLow-Eガラスの使い方について、数値化による検証により、各種日除けとの組み合わせで相反する夏の遮熱と冬の断熱要素を解決できることが、はっきりわかります。

祝!上棟 稲沢市N邸

愛知県稲沢市に建てるN邸。上棟しました。

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四日市市内は未明大雨警報が出ていて心配していましたが、少し雨のぱらつきはありましたが大きく降られることなく、むしろ日差しの暑い中、無事完了。

腕のよい大工さんぞろいで、作業は手際よく進み、現場はいつも以上に楽しそうな雰囲気でした。

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市街化調整区域内の古い集落の中なので、接道が狭いです(3.2m巾)。大型のレッカー車はどうやって入ったかと思われるほどです。材料搬入のトラックも小さ目となります。

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大きな家ではないですが、吹抜のリビング・大きな窓や広めのバルコニーなど楽しめる要素が盛り込んであります。南西側は水田が広がる好立地で、気持ち良くなりそうです。

 

 

三分一博志展

愛知淑徳大学長久手キャンパスで行われている三分一博志展を見てきました。

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三分一さんは、昨年の講演会で真面目な設計過程を伺い、好感と興味を持っている建築家です。

展示は、映像を使った初期の作品から最新作の紹介と近年、テーマとしているムービング・マテリアルに着目した作品のスタディ模型の展示が主です。

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初期の作品は、センスある上品な建物でしたが際立った特質は弱いように思えますが、ムービング・マテリアルとする地域の風・水・太陽の動きを調査・活用した建築作品は、三分一さん独自の建築形態を作り出していると思います。講演会で伺った風洞シュミレーションを検証した模型が展示されていましたが、その手作り感は予想外でした。一般に発表されている図版がきれいだったので、もっと大がかりな装置で検証しているのだろうと思ていました。

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(段ボール箱のなかに建物模型があり、中央の窓から、線香の煙の動きが見れる風洞実験装置)

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(アクリルでつくり、内部の風の動きを確認できる模型で検討)

自分たちのできるところを、臆さずやることで、成果につながることを感じました。

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淑徳大学に建築系の学科があることは知りませんでした。新しい校舎はシーラカンスのメンバーが設計していて、今風のセンスを感じる建物でした。建築学科の存在感が弱い中部圏です。各学校、もっとアピールして建築への関心が高まると良いですが。

長久手に行ったので、香山壽夫さん設計(1989年竣工)の「文化の家」も見学してきました。劇場・図書館などの複合施設で住宅地のなかに、突出しないようボリュームを抑えて作られています。各所ディテールをしっかり作りこんだきちんとした建物です。

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内部もしっかり作りこまれていて当時の建築家のエネルギーを感じます。

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最近のニュートラルな(建築家のパーツデザイン、空間の作りこみが少ない)建物つくりからすると、少し建物からの圧力を感じますが。(きちんと設計された価値ある建物だと思います)。

www.hattake.co.jp